2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J07077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中安 淳 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハミルトン・ヤコビ方程式 / 粘性解 / 最適制御理論 / 弱KAM理論 / 解の長時間挙動 / 特異拡散方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は前年度に引き続き非線形方程式論特に粘性解理論と変分学および距離空間上の方程式について研究し、非凸非強圧的ハミルトニアン、距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式の安定性解析において新たな成果を挙げた。以下ではそれぞれの研究課題の内容と意義について記述する。 1. 非凸非強圧的ハミルトニアン。非凸あるいは非強圧的なハミルトニアンはいくらかの物理的な背景があるが数学的には一般論が適用できず近年多くの研究者が研究を行っている対象である。今回の研究では非強圧的なハミルトニアンに対して周期的設定での均質化問題とその際に現れるセル問題を考察し、セル問題が解ける条件とハミルトニアンや初期条件によって均質化が起きる場合と起きない場合があることを示した。さらにその後、準凸なハミルトニアンに対してセル問題の数学定式化である加法的固有値問題の固有値の表現公式が凸の場合と同じ形で与えられることを示した。これらの結果は非凸非強圧的ハミルトニアンの弱KAM理論の発展に貢献するものである。 2. 距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式の安定性解析。凸なハミルトニアンを持つ一般の距離空間上の時間発展型ハミルトン・ヤコビ方程式に対して粘性解の安定性を示し空間がコンパクトな場合の解の長時間挙動を調べた。結果はユークリッド空間の場合から推察されるものであるが、有限なネットワークやシェルピンスキーのギャスケットのようなフラクタルといった対象にも応用できる点が新しい。また、無限次元空間の場合に安定性を正当化するための条件を明確化することができた。 上記のほかに今年度はクリスタライン曲率流の研究を動機とする特異拡散方程式について勾配流的解釈と粘性解理論的解釈の関係性について考察しており、来年度での進展が見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では来年度行う予定だった距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式の安定性解析について今年度のうちにおおむね満足のいく結果が得られ、関連する話題として非凸非強圧的ハミルトニアンの研究が進んだものの、本来行う予定だったクリスタライン曲率流の等高面法と距離空間での数値解析はあまり進まなかった。特に数値解析的アプローチは外部の研究者によってある程度の結果が得られたので今回の計画からは取り下げられる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き資料収集を進めつつ以下の研究課題について研究を進める。クリスタライン曲率流は二次元や高次元の場合め等高面方程式の粘性解の定式化および解の一意存在安定性を調べる。距離空間の中でも特にサブリーマン多様体やフラクタルを中心にその上の偏微分方程式を研究する。
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Research Products
(8 results)