2014 Fiscal Year Annual Research Report
ポリADPリボシル化によるクロマチン構造制御の包括的理解と分子メカニズム解析
Project/Area Number |
13J07144
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤木 克則 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリADPリボシル化 / 次世代シーケンサー / PARP / PARG / ChIP-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、PAR化修飾によるクロマチン構造制御が関わる未知の生命現象の探索と、その分子メカニズムの解明である。この目的のため、初年度にはPARとの結合が報告されているタンパク質ドメインであるマクロドメインを持つ、ヒトHistone macroH2A1.1遺伝子からマクロドメインと核内移行配列を取り出し、これに免疫沈降をおこなうためのmycタグをつけたPARプローブを作製してChIP-seq実験を行って、ゲノム上のPAR化領域の分布を示すパイロットデータを得た。 このデータを詳細に解析したところ、PARは遺伝子の転写開始位置に強く分布すること、また遺伝子の転写レベルに応じて遺伝子上で異なったPARの分布パターンを持つことが明らかとなった。これらのデータは、PARが遺伝子の転写に何らかの働きを持つということを強く示唆するだけでなく、遺伝子のどの領域が修飾されるかによって転写に及ぼす影響が異なることを示していた。 またPARを分解する働きを持った酵素であるPARGをsiRNAによってノックダウンした細胞において、同様にPARプローブによるChIP-seqを行いPARの分布を求め、先に明らかにした野生型細胞のPAR分布データとの差分を求めることで、ゲノム上におけるPARG活性の高い領域をマッピングすることにも成功した。このデータにより、PARGの活性もPAR化活性同様に遺伝子の転写活性と非常に相関した分布の変化をすることが明らかになった。またゲノム上のタンパク質のPAR化はPAR化活性とPARGによるその分解活性のバランスによって遺伝子の転写活性に応じて絶妙にコントロールされていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、初年度に開発したPARプローブを用いてPARのゲノム上の分布を次世代シーケンサーを使用したChIP-seqによって明らかにし、そのデータを解析してPARの機能に関する新たな知見を得ることであった。実際、PARのChIP-seqデータから非常に多くの有益な情報を得ることができた。また、このPARプローブを用いたChIP-seq実験を応用し、PARGの活性が高い領域をゲノムワイドにマッピングすることができた。これらの知見は、ゲノム上のたんぱく質のPAR化が遺伝子の転写活性に応じてPAR化活性とPARGによるその分解活性のバランスによって制御されていることを示唆していた。 また本年度には、これらChIP-seq実験によって得られた知見を実際に検証するための新たな実験系の構築にも取り組み、一定の成果を得た。PAR化の遺伝子発現に対する影響を評価するため、試験管中でDNAの転写を再構成する系を用いてPAR化の有無で遺伝子の転写レベルを計測したところ、PAR化が転写に正の影響を与えることが分かった。PAR化による転写制御の分子メカニズムの解析は次年度の目標として掲げられていたものであるが、本年度においても一部前倒して研究を行い成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の目標は、ChIP-seq解析によって明らかになったPAR化と遺伝子の転写との関係について、その制御メカニズムを様々な実験系を用いて明らかにすることである。in vitroでDNAの転写を再構成した実験系を用いて、すでにその一部について研究を実践に移しており、一定の成果を上げている。今後はこの実験系を中心として、これにさらなる改良を加えてPAR化の転写制御、クロマチン構造制御についてのより詳しい機構を明らかにしていく予定である。
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