2013 Fiscal Year Annual Research Report
MOS構造デバイスによるシリコン電子スピン量子ビット実現へ向けた研究
Project/Area Number |
13J07182
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀部 浩介 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子コンピュータ / シリコン量子ドット / 電子スピン / チャージセンサ / バレースプリッティング |
Research Abstract |
シリコン量子ドットデバイスを用いた量子コンピュータの実現に向けた研究を進めている。平成25年度は、①デバイス作製プロセスの改善およびデバイス作製、②デバイスの極低温測定(測定温度300mK)による少数電子2重量子ドットの観測、③チャージセンサからのバックアクションによるバレー間遷移観測およびバレースプリッティングの測定、④RF測定系の立ち上げを行った。 まず①について、以前からデバイスのSi-SiO_2界面に欠陥ができてしまい、デバイス特性が著しく損なわれてしまうという問題があった。そこで、リソグラフィ工程における保護膜形成によるSi-SiO_2界面の清浄化、レジスト剥離条件の改善などを行った。その結果、②の2重結合量子ドットの少数電子状態を歩留まり良く得ることができる(デバイス10個中、3個ほど)特性の良いデバイスを作製することに成功した。これは、本研究の次のステップであるバレースプリッティングの測定や電子スピン操作に向けて、実験の信頼性と成功率を高める重要な結果である。 その後③にあるように、少数電子2重量子ドットにおける1-2電子間のトンネリングにおいて、チャージセンサからのバックアクションによるバレー間遷移の励起線を明瞭に観測した。同時にこの測定においてバレースプリッティングを測定することに成功した。この結果は、シリコンデバイスにおいて実際に、量子ビット状態を破壊するチャージセンサのバックアクションが存在することを実験的に証明するものである。また、バレースプリッティングの測定の成功は、今後のバレースプリッティングの電界依存性を調べるために重要な進展である。この③の結果について、現在論文を執筆中である。また④として、これから行う高周波測定に向けて、サーキットボードの設計と作製、RF用サンプルホルダの作製、RF測定に必要な測定機器を揃え、RF測定系の立ち上げを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
任意の電界中でバレースプリッティングを測定するためには、既存の装置よりも外部磁場を大きく印加する(3T以上)装置が必要であることが明らかになり、その装置を準備するために時間がかかってしまった。そのため、当初の目的である「バレースプリッティングの電界依存性の調査」についてはこれから詳細に研究を進めていく予定である。一方, 当初の目的とは違うが「チャージセンサのバックアクションの観測」という重要な結果を得ることができたため、研究内容の充実度という観点からは順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
大きな磁場(~9T)を印加できる装置の準備が済んだため、「バレースプリッティングの電界依存性の調査」を実験的に行うことが可能となったので、計画書どおりの方法で研究を進めていく予定である。また、その次の目的である「量子ビットのコヒーレント時間とバレースプリッティングの関係の調査」のために必要なRF測定系の立ち上げが済んだので、こちらも同様に実験を進めていく予定である。 また、これまでの研究で得られた結果である「チャージセンサのバックアクションの観測」について、論文執筆を進め投稿を行う予定である。
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Research Products
(3 results)