2013 Fiscal Year Annual Research Report
DNA結合親和性に寄与するGATA1アミノ末端側亜鉛フィンガーの生理機能解析
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13J07201
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷川 敦史 東北大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | GATA1 / アミノ末端側亜鉛フィンガー / 表面プラズモン共鳴法 / トランスジェニックマウス / 大腸菌人工染色体 |
Research Abstract |
本研究では、GATA1アミノ末端側亜鉛フィンガー(N-フィンガー)生理的役割を、DNA結合能の観点から解析し、その機能破綻に起因する血球分化異常発症メカニズムを明らかにすることを目的とする。 1. 精製蛋白質を用いた生化学的DNA結合能解析 表面プラズモン共鳴法による結合速度論解析の結果、GATA結合配列パターン(数・並び方)の違いに依存して、GATA1の結合様式・結合強度に多様性が生じることを明らかにした。特に本研究で重点的な機能解析を目的としているN-フィンガーは、回文状の重複GATA結合配列を特異的に認識することがわかった。この結果は、GATA1のDNA結合におけるN-フィンガーの役割を裏付けるものである。また結合速度論という独自の観点から構築したGATA1のDNA結合モデルは、GATA1の詳細な分子機能解明を導く重要な知見となる。 2. トランスジェニックマウスを用いた、N-フィンガーDNAの相互作用の生理的機能解析 ヒト遺伝性血液疾患患者から見つかった、回文状GATA結合配列への結合が特異的に減弱化するGATA1変異体をマウス個体内で発現させることにより、変異に起因して、GATA1標的遺伝子の広域な発現異常と、致死性の貧血を誘発する重篤な赤血球分化異常が引き起こされることを明らかにした。この結果は、上記の生化学的解析で明らかにした結合様式の特異性が個体内でも再現され、実際の血球分化において重要な役割を担っていることを示し、またその機能破綻が直接的に病態形成に関わることを示唆する、生理・病理学的に重要な知見である。 さらに、GATA結合配列パターンに依存した結合様式の多様性が、ゲノム全域に渡って認められるかを検証する為、タグ付き野生型GATA1及び変異GATA1を安定発現するマウス赤白血病由来細胞(MEL)株を樹立し、今後の網羅的ChIP-Seq解析に用いるサンプルを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結合速度論に基づいたGATA1のDNA結合モデルの構築と、マウス個体内でのDNA結合特性の再現、およびその破綻による遺伝子発現制御・血球分化異常の解析に成功した。また網羅的ChIP-Seq解析に用いるサンプルの取得に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに樹立した細胞株を用いた網羅的ChlP-Seq解析により、細胞内でのGATA1結合領域中で、N-フィンガーが特異的に関与する配列パターンとして回文状GATA配列が有意に抽出されるかを、生物情報学の観点から検証する。この結果を変異GATA1レスキューマウスでのマイクロアレイ解析結果と比較し、回文状GATA配列への結合異常が、個体レベルでの発現制御異常に結びつく遺伝子が存在するかどうかを検証する。また、DNA結合様式の違いが転写活性化能の強弱に直接的な影響を与えているかを、ルシフェラーゼレポーター解析により検討する。以上の解析により、多様なDNA結合様式により調節される、GATA1の複雑な標的遺伝子発現制御機構を構成する新たなメカニズムを提唱することができると考える。
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Research Products
(2 results)