2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物のアルカリ塩応答における液胞膜型ナトリウム・プロトンアンチポーターの機能
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13J07241
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 紫緒 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナトリウム・プロトンアンチポーター / アルカリ塩耐性 / 耐塩性 / 野生植物 |
Research Abstract |
本研究は、いまだ詳らかでないアルカリ塩の高等植物への影響について知見を深めるとともに、その耐性機構と、アルカリ塩処理によりイネ等で根特異的に遺伝子発現が上昇する液胞膜型ナトリウム・プロトンアンチボーター(NHX1)との関係を調べる目的で行われた。本年度の成果は以下のようである。まずリアルタイムRT-PCRによる発現解析により、シロイヌナズナのNHX1の遺伝子発現へのアルカリ塩の影響を調べたところ、やはりアルカリ塩は中性塩よりも強く根での発現を誘導したが、その誘導の強さはイネで見られたよりもはるかに弱かった。酵母のNHX1欠損変異体はアルカリ塩に感受性を示したが、シロイヌナズナのNHX1欠損変異体は野生型とほぼ変わらない耐性を示した。NHX1を全身および根で過剰発現するシロイヌナズナを作製したため、同様にストレス耐性試験を行っていく。また液胞膜マーカーを発現させ液胞を可視化したシロイヌナズナをアルカリ塩で処理したところ, ごく低濃度の処理で液胞形態に異常が見られた。液胞形態は内部のpHに影響されるため、pH感受性蛍光試薬と共焦点レーザー顕微鏡を用い液胞内pHを観察したところ、アルカリ塩処理下では液胞内部のpH上昇が見られた。なおこの結果はイネ・シロイヌナズナの感受性植物2種に加え、アルカリ塩に強い耐性を持つイネ科野生植物のPuccinellia tenuifloraでも同様であった。本研究の到達点は耐性機構の解明という目標にはまだ遠いが、アルカリ塩暴露という原因と枯死という結果の間に介在する具体的な現象のひとつを明らかにし、今後の研究の足掛かりを作ることができたという意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究実施計画に挙げた5項目のすべてを実施することができた。一方でネガティブな結果も多く、成果の発表が思うようにできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
液胞膜型ナトリウム・プロトンアンチポーターについては、シロイヌナズナの過剰発現体を用いアルカリ塩耐性との関係を探っていく。またこれまでに得た結果を踏まえ、液胞PHはなぜ上昇するのか、それが植物の死とどう関係するのか、またアルカリ塩耐性野生植物はなぜそれに耐えることができるのかといった点を明らかにしていきたい。ナトリウム・プロトンアンチポーターのみでは説明が難しいと予想されることから、着眼の範囲を広げ、遺伝子発現や代謝について網羅的に見ていく方針である。
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Research Products
(2 results)