2013 Fiscal Year Annual Research Report
細菌・卵菌・ウイルス病害に対する新規「三重耐病性」の解析とその応用に向けた研究
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13J07248
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中野 真人 愛媛大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 植物病理学 |
Research Abstract |
本年度は、三重耐病性機構を解明するために、1. 三重耐病性植物における防御応答の解析、2. 三重耐病性植物におけるリン脂質の解析、3. 耐病性誘導に関わるリン脂質の同定、を行った。 1. 三重耐病性植物における防御応答の解析 三重耐病性植物に病原体を接種した後、抵抗性誘導に関わる種々の反応を分子遺伝学的に解析した。三璽耐病性植物では、植物病原細菌である青枯病菌の感染時に活性酸素種の生成が充進した。また、防御応答に関わるジャスモン酸応答遺伝子の発現が顕著に増加した。これらの結果から、青枯病菌を接種した三重耐病性植物では、ジャスモン酸と活性酸素種により介在される情報伝達経路が活性化し、病害抵抗性が誘導されたものと推察された。 2. 三重耐病性植物におけるリン脂質の解析 病原体を接種した三重耐病性植物からリン脂質画分を抽出し、対照植物のものと比較解析を行った。三重耐病性植物の主要な構造脂質含量は、対照植物とほぼ同様であった。一方、三重耐病性植物では、セカンドメッセンジャーとして機能する特定のリン脂質含量に差異が認められ、青枯病菌接種24時間後では対照植物の約2倍に増加した。これらの結果は、このリン脂質が耐病性の誘導に関わることを示唆している。 3. 耐病性誘導に関わるリン脂質の同定 2.の実験で見出したリン脂質を植物に処理し、病原体感染時の防御応答を比較検討することで、耐病性を誘導するリン脂質分子種の同定を試みた。飽和型、不飽和型、短鎖型の脂肪酸から構成される各種リン脂質の溶液を噴霧器により植物に処理し、青枯病菌を接種した際の耐病性を評価した。リン脂質を処理した植物において、活性酸素種の生成量は水処理区と比較して顕著な差は認められなかった。また、ジャスモン酸応答遺伝子の発現量に関してもポジティブな結果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三重耐病性植物のリン脂質を解析したところ、病原体感染時に特定のリン脂質含量が増加することが明らかになった。この結果は、三重耐病性の誘導に関わるリン脂質を同定し、リン脂質代謝と三重耐病性との関連性を明らかにするうえで有益な手がかりになると考えられ、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はリン脂質の生合成に関わる酵素群に着目し、これらの変異体の表現型解析や脂質分析を通じて、リン脂質代謝が三重耐病性の誘導に関わることを立証する予定である。さらに、変異体と対照植物間で顕著な違いが認められた脂質分子にっいては、植物免疫における生理活性を評価し、耐病性誘導能の有無を検討する。
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