2014 Fiscal Year Annual Research Report
高反応性カチオン種の触媒的制御を志向したキラルボレート塩の創製と機能評価
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13J07425
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木津 智仁 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / キラルイオン対触媒 / キラルアニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン対触媒は、イオン対間に働く強いクーロン相互作用によりイオン性活性種を認識し、反応性や立体選択性を制御するための触媒として広く研究されている。しかし、既知のイオン対触媒系を俯瞰すると、キラルカチオンを持つ触媒と相補的になるべきキラルアニオンを持つ触媒による反応性カチオン種の制御を実現した例は非常に限られている。これは、入手容易なキラルアニオンが一般に求核性を持ち、高い反応性を持つカチオン性中間体と反応しイオン性を失うことで、分子認識を実現するためのクーロン相互作用が期待できなくなるという根源的問題に起因する。 本研究では、新たなキラルアニオンを設計するためのコア構造として四配位ホウ素アニオンすなわちボレートに着目した。ボレートは、特有の立体的・電子的性質を利用した金属への配位子、あるいはBArF-のような嵩高い非配位性アニオンとして広く使われてきた一方で、立体制御能を期待する試みは少なく高い立体選択性を示すボレートは殆ど知られていない。我々は、非配位性アニオンの求核力を持たないという性質を活かして特有の三次元構造を有するキラルボレートを創製できれば、高反応性カチオン種の新たな立体制御法を確立し得ると考えた。 本年度は、合成済みのモデル化合物であるアキラルなボレートの合成で得られた知見を基に、剛直な骨格の導入によるボレートの安定性向上を目指して従来の2座配位型を4座配位型骨格にしたキラルボレートを設計した。実際課題であったホウ素-ヘテロ原子結合が有する可逆性による不安定性はBN2O2型の4座配位子により改善され、合成したボレートはカラムクロマトグラフィーによる単離操作に耐える堅牢性を有し、イオン交換によって種々の対イオンを持つ塩の調製が可能だった。現在は、本ボレートをアニオンとするキラルイオン対触媒を実際の反応系に適用し、カチオン性活性種の認識・制御能の評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は既に合成に成功したアニオンキラル型イオン対触媒を用いた新しいカチオン性活性種の立体制御反応を探索し、実際に本法の有効性を示唆する結果を得た。今後は継続的に本触媒が有効に機能する反応系を探索すると同時に触媒骨格の修飾を行い、構造の最適化と触媒ライブラリの増強を推し進める。
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Strategy for Future Research Activity |
カチオン性中間体を経由する様々な反応に適用することで、本触媒による制御が有効なカチオン性活性種の構造を精査するとともに本法による立体制御因子への理解を深める。具体的には合成したボレートの高い安定性を生かし、これまで難しかったプロトンを対イオンに持つボレートを用いた立体選択的酸触媒反応および種々のカチオンを対イオンに持つボレートを用いた新たな立体選択的分子変換の二つのアプローチを軸に研究を進める。さらに、立体構造・電子的性質を系統的に調整した触媒ライブラリを構築し、触媒の構造をパラメータとして反応の立体選択性との相関を見ることによって、カチオン性活性種の制御因子についての情報を集め、今後の触媒開発のための基盤とする。
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Research Products
(3 results)