2013 Fiscal Year Annual Research Report
レオロジー測定によるナノフィブリル化セルロースの形成機構およびナノ構造解析
Project/Area Number |
13J07645
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田仲 玲奈 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セルロース / TEMPO触媒酸化 / レオロジー / ずり粘度 |
Research Abstract |
セルロースは地球上最も豊富に存在するバイオマスである。近年、その構成単位であるセルロースナノフィブリルは、高強度・高弾性率・大比表面積など優れた特性を有することから、複合材料中の補強材、酸素ガスバリア膜、衝撃吸収材等への応用展開が期待されている。本研究では、これら材料の物性に大きく影響を及ぼす、セルロースナノフィブリルの平均長をずり粘度測定により明らかにすることを試みた。 既報に基づき、異なる条件で十種のセルロースナノフィブリルを調製した。希薄ナノフィブリル分散液のずり粘度測定により臨界ずり速度を測定し、剛直性棒状粒子の希薄域における流動性を記述したDoi-Edwards式に代入して平均長(L_<visc>)を算出した。各分散液の希薄域は、希薄域と準希薄域の境界濃度である臨界濃度(c*)により得られた。臨界濃度はTEM観察で得た加重平均長(L_w)から求めたセルロースナノフィブリルのアスペクト比(p)と相関があり、c*=18/p^2という関係式で表されることが新たに明らかになった。得られたL_<visc>は1,100-2,500nmであり、L_w (300-1000nm)よりも約3倍近い値を示した。L_<visc>とL_wは非常に良い線形関係にあり、ナノフィブリル表面の電気二重層やカルボキシル基量に関係なくL_<visc>=1.764×L_w+764という関係式で表された。さらに、L_<visc>は粘度平均重合度とも線形関係を示した。 本研究により、希薄セルロースナノフィブリル分散液のずり粘度挙動に関する新たな知見が多く得られただけでなく、従来法の電子顕微鏡観察では成しえなかった、湿潤状態でのセルロースナノフィブリルの平均長を簡便に測定することに成功し、平成25年度の研究計画を超える成果を得ることができた。これらの成果はCellulose誌に掲載され、国内・国外含め学会発表を計5件行った。また、第20回セルロース学会、第44回繊維学会夏季セミナーにおいて、優秀ポスター賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大容量のセルロースナノフィブリル/水分散液のずり粘度を測定することによって、これまでに測定が不可能であった湿潤状態でのセルロースナノフィブリル平均長の評価に成功した。これはセルロースナノフィブリルを用いた複合材料、酸素ガスバリア膜、衝撃吸収材等新規材料の利用促進にあたり、簡便かつ信頼性の高い平均長評価法として今後産業レベルでの活用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは木材セルロースから調製したTEMPO酸化セルロースナノフィブリルに限定し、平均長評価法を確立したが、他のセルロースナノフィブリルにも適用できる汎用性の高い手法にする必要がある。よって来年度は、海藻やコットン等他の原料から調製したセルロースナノフィブリルを対象に、ずり粘度測定による平均長評価を行う。
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Research Products
(7 results)