2014 Fiscal Year Annual Research Report
レオロジー測定によるナノフィブリル化セルロースの形成機構およびナノ構造解析
Project/Area Number |
13J07645
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田仲 玲奈 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ナノセルロース / レオロジー / 固有粘度 / 粘弾性 / ホロセルロース / 屈曲性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノセルロース分散液の代表的な流動特性である固有粘度は、そのアスペクト比のみの関数で表されることを始めて明らかにした。ナノセルロースとは、剛直な棒状のセルロースナノクリスタルと屈曲性を有するネットワーク状のナノフィブリル化セルロースの総称であり、主に木材セルロース繊維を機械的・化学的処理により水中で解繊することで得られる、新規バイオナノ材料である。ナノセルロースは高強度、高弾性率、低熱膨張率など優れた特性を有する高機能新規バイオナノ材料であり、複合材料の補強材や断熱材、酸素ガスバリア膜等様々な用途への応用展開が期待されている。これらの新規材料は総じて水中に分散したナノセルロースから調製されるため、その流動特性を理解することは、ナノセルロース由来の高機能材料の設計のために非常に重要である。 本研究では、異なる幅・アスペクト比を有する七種のナノセルロース分散液を用いて、ナノセルロースの屈曲性やサイズの違いがその流動特性に及ぼす影響を実験的・理論的手法から検討した。ナノセルロースのアスペクト比が大きくなるほど、水中での屈曲性が増し、結果として高アスペクト比ナノセルロースは増粘効果を示すことが明らかになった。また、屈曲性やサイズに依らず、固有粘度はアスペクト比に指数関数的に比例することが明らかになった。これにより、あらゆるナノセルロースの平均長は固有粘度を測定することによって簡便に決定できることが示された。本研究成果は現在科学雑誌に投稿中である。 また、フィンランドVTTにて新たな粘弾性測定方法である水晶振動子マイクロバランスセンサ(QCM-D)を習得し、異なるpH・塩濃度の緩衝液がナノセルロースの粘弾性挙動に及ぼす影響を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、前年度に確立したずり粘度測定によるナノセルロース平均長評価法の精密化・一般化を目標とした。サンプル種やサイズ、屈曲性によらず、固有粘度によってナノセルロースのアスペクト比を決定できることを実験的・理論的手法から明らかにできた。一方、アスペクト比の非常に大きい果実由来のホロセルロースについては、QCM-Dを用いることで粘弾性に関する新たな知見が得られたものの、長さ評価にまでは至っていない。以上より、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
非晶性多糖が吸着したホロセルロースフィブリルの分散液と、固定電荷が導入されたナノセルロースフィブリルの分散液について、濃厚域における粘弾性測定を行い、フィブリル表面の構成成分が粘弾性に及ぼす影響について検討する。また、希薄域においてホロセルロースフィブリルの平均長評価を行う。
|
Research Products
(7 results)