2013 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェン液体セルを用いた生体内反応のリアルタイムTEM観察
Project/Area Number |
13J07680
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐々木 祐生 名古屋大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | グラフェン / 環境セル / 透過型電子顕微鏡観察 / 低次元材料 / 化学気相成長法 / 材料科学 |
Research Abstract |
当初の予定通り、液体セルの出来栄えを左右するグラフェンの高品質化を目指し、グラフェンの合成条件の最適化を行い、大面積かつ高品質のグラフェンを合成に成功した。しかし、大面積単一グラフェン粒子同士がうまく接合せず、膜全体としての性質が劣化してしまい、本研究でキーポイントとなる、グラフェンに対してポリマーを用いない転写法での「クリーンな液体セル」の作製が困難になったことで、思わしい成果が得られなかった。そこで急遽方針を変更し、基板となる銅箔を水素処理により疑似単一結晶化し、その上に高配向性のグラフェン粒子を合成、接合させることで、非常に膜質の良いグラフェン膜を得ることに成功した。この手法は、グラフェン単分子の大きさは数百μm程度に低下したが、配向性が高いため、粒子同士の構造の差異が少なくなり、また水素処理によって銅箔上での炭素組み換えが活発化するとの報告もあるため、わずかな差異も安定な構造へと変化することが期待でき、結果的に銅箔全体に単一グラフェンが広がった状態に近いものが得られている。この時点で当初1年目に予定していた研究成果が十分得られたものとして、次年度に予定していた研究を先行して行った。 次に上記手法で作製したグラフェンに水溶液を挟む技術を確立した。評価はTEMで行った。挟む手法としては、TEMグリッドへ転写したグラフェンに対して、スプレー噴霧の後、再度転写を行うことで層間に液滴を挟むことを計画段階で検討していたが、実際この手法で問題なく挟めることを確認した。挟む対象として、当初の予定通り、はじめに水や塩化カルシウム水溶液などを観察した他、クロロホルム等の有機溶媒にも適用可能であることを確認した。また、同様の手法が六方晶窒化ホウ素膜などの他の2次元物質にも適用可能であることを確認し、観察対象に応じて適切な膜を選択することで、観察をより効果的に行うことができることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画した以上の進展を見せており、2年目に行う予定であった研究も問題なく進行し、現在はその結果の論文作製に着手しており、極めて順調である。さらに当初予定していなかった、本研究課題の高い汎用性や応用性を示ず、新奇ナノ構造体の観察にも成功しており、期待以上の研究の進展があったと言える。また、この新奇ナノ物質に関する論文作製、および学会発表などにも既に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の手法で水および水溶液をグラフェン層間に挟むことには成功しているが、大容量の水溶液を挟むことはできておらず、水本来とは全く異なる挙動ばかりが観察されている。本研究の最終目的は生体内分子の直接的TEM観察であることがら、生体内分子は水の中に溶けている状態を観察する必要があり、今のままでは挟まれている水の容量が不足している。そこで今後はグラフェンよりも親水性が高いはずの六方晶窒化ホウ素膜を利用して、より多くの水を挟むことを検討している。六方晶窒化ホウ素膜で挟む以外にも、グラフェン膜自身を親水処理することで、十分効果が得られる可能性もある。また、大容量の水溶液を挟むのではなく、極少量の水も非常に興味深く、前述の水本来と異なる相挙動の研究も進める。
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Research Products
(5 results)