2013 Fiscal Year Annual Research Report
多自由度電子系における複合フェルミオン生成とその動力学
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13J07701
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 晋太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近藤効果 / 奇周波数超伝導 / Pr化合 / U化合物 / マイスナー効果 |
Research Abstract |
固体中で相互作用しあう電子の集団は、個々の粒子の持つ性質からは想像もできない多彩で興味深い性質を示す。本研究で対象とするのは低温で電気抵抗が消失する超伝導現象である。これは有効的な引力によって形成された電子対がボーズ凝縮することによって生じる。超伝導のタイプは電子対の時間構造に注目した場合、偶周波数超伝導と奇周波数超伝導に分類される。偶周波数超伝導は理論・実験両方からよく理解されている。一方で奇周波数超伝導については、最近でも熱力学的に安定に存在することが可能かどうか議論されている状況であり、偶周波数超伝導ほど研究が進展していなかった。この非自明な超伝導状態に対する理解の深化は、これまで謎であった超伝導状態の解明につながる可能性がある。 本研究では奇周波数超伝導の理解をさらに進展させるために、正確な理論手法を駆使して具体例を確立し、それに基づいて超伝導の性質を議論することが重要であると考えた。そこで、実現可能性が指摘されていた2チャンネル近藤格子というモデルに注目した。これはPrやU元素を含む化合物の電子物性を記述するモデルのひとつである。この系において超伝導状態が実現するかどうかを明らかにするため、局所的な電子相関を正確に扱うことのできる動的平均場理論を駆使して解析した。研究計画当時では超伝導が出現するとは考えていなかったが、実際にペア感受率という物理量を計算して調べたところ、低温で奇周波数超伝導状態が実現することを見出した。さらにこの超伝導状態を記述する有効理論を構築することにも成功し、これを用いて超伝導特性のひとつであるマイスナー効果が得られることを微視的に導出した。このように本研究では奇周波数超伝導が熱力学的に安定に存在することを明らかにし、2チャンネル近藤格子という具体例を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画時ではまず超伝導ではない奇周波数秩序に対する理解を深め、そこで得られた知見を超伝導に応用しようと考えた。しかし実際には、ペア感受率を数値的に計算することによって2チャンネル近藤格子において奇周波数超伝導を見出すことに成功し、電磁応答などの性質を直接議論することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では2チャンネル近藤格子において奇周波数超伝導を見出した。今後はこのモデルにおいて得られた知見を基に、PrV2Al20やUBe13などの物質に即した議論を行いたい。具体的には、結晶構造を反映した相互作用の異方性や伝導電子のバンド構造、f電子の電荷の自由度を取り入れる。方法としてはこれまで用いてきた動的平均場理論、それが難しい場合には構築した有効理論を用いた解析を行う。また、2チャンネル近藤格子以外の系においても新しい超伝導の探索を行う。例えば、軌道自由度を有するハバードモデルや電子・フォノン結合系において奇周波数超伝導を含めた秩序状態への不安定性を議論する。
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Research Products
(14 results)