2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J07704
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
樋本 和大 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 水 / 氷VII / プラスチック相 / 相転移 / 臨界現象 / 三重臨界点 / 計算機シミュレーション / Landauの現象論 |
Research Abstract |
研究成果の具体的内容|高圧氷のひとつである氷VIIを融かすと、プラスチック相(「プラスチック氷」)に相転移することが計算機シミュレーションにより示されている。本研究では、広い温度圧力領域で分子動力学シミュレーションを実施し、氷VIIIとプラスチック氷の間の相転移挙動を詳細に調べた。低圧では一次相転移であることが確認され、高圧領域において定圧熱容量の発散に代表される臨界現象が観測された。我々は代表的な臨界指数を求め、それらが圧力によらずスケーリング則を満たすことを確認した。つまり高圧側では二次相転移であることが明らかとなった。氷VIIとプラスチック氷の差異を記述するオーダーパラメーターを導入し、自由エネルギー関数を調べたところ、Landauの現象論に基づき、低圧側での一次相転移と高圧側での二次相転移が三重臨界点で切り替わるという結論を得た。 意義・重要性|氷VIIは融点が確定しておらず、その融解のしかたについても不明だった。計算機シミュレーションによって、氷VIIIが融ける際にプラスチック氷と呼ばれる中間状態を経ることが予測されており、本研究では、氷VIIIからプラスチック氷への相転移をさらに詳しく調べることで、臨界現象と呼ばれる異常性が現れることを見いだした。水に関しては、臨界現象は気液臨界点以外では観察されないとこれまでは考えられてきた。今回の発見は、水の持つまた別の変わった一面を示すもので、氷VIIの融点を確定するヒントを与えるとともに、氷VIIの融点付近で新たに異常な性質が今後も見つかる可能性を示している。地球上ではこのような超高圧の氷が自然に生じることはないが、惑星や衛星の地質や気象をより正確に理解し予測するのに役立つと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は、(1)氷VIIとプラスチック氷の間の相転移挙動を明らかにすること、(2)氷VIIへの結晶化機構を明らかにすること、の2点の達成である。(1)については、大規模なシミュレーションと詳細な解析により、新たな臨界点を見出し、現象論的な解釈を与え、論文を1報発表した。(2)については、氷VVIIへの結晶化過程において新規の準安定結晶構造が出現することを確認し、論文を執筆中である。さらに、(1)に関する理論モデルも構築されつつあり、全体的に当初の計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)氷VIIへの結晶化に関する研究を論文にまとめ、発表する。 (2)氷の三重臨界点を記述する理論モデルの構築を達成する。 (3)超高圧における水の新規結晶相を計算機シミュレーションで探索する。 (4)広い温度圧力領域で、液体状態の水のネットワーク性を解析する。
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