2014 Fiscal Year Annual Research Report
外国人のシティズンシップ-グローバル化時代における国民国家の再定位に向けて
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13J07837
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮井 健志 北海道大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シティズンシップ / 国際人口移動 / 政治理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「シティズンシップ」を鍵概念とし、国民国家の外国人受け入れに関する包括的な規範理論の構築を目指すものである。採用二年度目となる本年度は、まず歴史に焦点を合わせ、欧州各国を中心に現状の背景をなす歴史展開とその中心的論点の把握を試みた。また本年度後半には、規範理論へと力点を移し、本研究の全体的な理論枠組みのなかに既存の立場を再配置して検討した。 具体的には、本年度前半は主に二次資料を中心に欧州各国の移民政策の歴史に関して論点の洗い出しを行い、従来の研究では十分に検討されてこなかった側面として、移民送出国の政策的コミットメントという要素を見出した。さらに昨今の歴史状況において、送出国と受入国の国家間関係は移住者の生活を規定するきわめて重要な要因となっていることを確認した。これにより政治学的な移民研究における一国中心主義的な視座を転換する必要を痛感し、送出国と受入国、そして移住者の三角関係において把握される移民政策という新しい視角を得た。本年度後半は、上記の知見にしたがって理論化作業を進めた。とりわけ「受入国と送出国との間で移住者に対する政治的責任はいかに分有されるか」という観点から既存の理論的立場を再配置し、大まかな見取り図を描いた。その結果、この論点については、いずれの立場も不十分な応答に終始しており、現状への批判的指針たりえていないことが明らかになった。送出国と受入国の双方へと移住者が自らを政治的に係留するなかで作り出す「シティズンシップ」、すなわち「外国人のシティズンシップ」の解明という最終年度の課題は、この認識に基づいて設定されている。 以上のように、本年度は、現状と歴史から有意な問題設定を抽出し、それに関する規範理論を整理し検討するという課題を着実に遂行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までの主な課題であった現状と歴史に釣り合った有意な問題設定の抽出作業は、計画通りに達成できた。それに関する規範理論の整理と検討も、予定通りに進んでいる。また、これらの研究の一部は学会にて報告できた。論文の公刊にやや遅れを感じているが、すでに数点の論考が投稿準備の段階にあり、最終年度内に公表できる見込みである。以上より、全体としておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、本年度までに行った基礎的研究から応用的研究へと歩を進め、移民送出国と受入国との政治的関係のなかで成立する「外国人のシティズンシップ」を理論的に解明することが課題となる。まず年度前半は、本研究が擁護する中核的テーゼの抽出とその理論化を第一課題として取り組む。それを受けて年度後半は、それまでに行った現状・歴史・規範理論の各知見を相互参照し有機的に関連づけつつ、研究を完遂する。なお最終段階へと移行する際には、交流のある国内外の研究者にご協力をお願いし、特に議論の全体構造と整合性を点検するレビュー期間を設ける予定である(夏頃を目途)。これらに合わせて、基礎資料の収集、学会や研究会への参加、論文の公刊といった活動は継続して行う。全体としては、研究計画の完遂を第一としつつ、アウトプットを意識して進めていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)