2014 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の羽化リズムを制御する複数振動体系とその適応的意義の解析
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13J07838
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊藤 千紘 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 羽化リズム / 主従2振動体モデル / 温度感受性 / 光感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの昆虫は体内にある内因性の時計機構(概日時計)を使って、ある特定の時間帯に蛹から成虫に羽化する。ウスグロショウジョウバエでは羽化のタイミングを制御する概日時計機構には光感受性の振動体と温度感受性の振動体が関わることが示されているが、この実体はいまだ不明である。本研究では、分子遺伝学的手法が有効であるキイロショウジョウバエ羽化リズムを解析することにより、2つの振動体の実体を明らかにする。 本年度は、2つの振動体の性質を明らかにするため、明暗周期と温度周期をさまざまな位相で組み合わせた条件下での羽化のタイミングを調べた。羽化の位相は明暗周期と温度周期の位相関係の変化に伴って変化した。これはキイロショウジョウバエの羽化のタイミングを制御する機構に光感受性と温度感受性の概日時計の2振動体が関与すること、および、明暗周期と温度周期の同調因子としての相対的な強さが同等であることを示している。さらに、同様の条件で飼育したハエの羽化パターンを温度一定の全暗条件で観察したところ、光感受性の振動体が温度感受性の振動体の上位にあることを支持する結果を得た。 キイロショウジョウバエでは脳と前胸腺という内分泌器官にある概日時計が羽化のタイミングを制御することが分かっている。この2つの振動体が光感受性および温度感受性に相当するかを調べるため、遺伝子組換え体を用いて概日時計の機能を組織特異的に阻害し、明暗周期と温度周期の位相関係の変化に伴う羽化の位相変化にどのような影響があるかを調べた。全身の概日時計を機能阻害したハエの羽化はどんな条件下でも無周期におこり、温度の上昇あるいは明期の始まりといった急激な刺激に、羽化が誘導されることはなかった。今後は、脳にある概日時計、前胸腺にある概日時計のみを特異的に機能阻害し、明暗周期と温度周期の位相関係の変化に伴う羽化の位相変化を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、実験条件を再検討し、計画を大幅に変更した。その結果、実験にかかる時間を短縮することができ、予定していた実験はおおむね順調に進行た。引き続き、同様のレジームで実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型を使用した羽化パターンを調べる実験はおおむね終了することができたので、今後は遺伝子組み換え系統を使用して個々の振動体を特異的に阻害する実験をおこなう。また、明暗周期と温度周期をさまざまな位相で組み合わせた条件において脳の概日時計と前胸腺の概日時計がどのような挙動を示すのか、抗概日時計タンパク質抗体を用いた免疫組織化学法によって明らかにする。
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Research Products
(3 results)