2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J07879
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 明穂 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リチウムイオン電池 / 透過型電子顕微鏡 / 二相共存 / 相境界 |
Research Abstract |
本研究では、充放電中に2相共存を示すリチウムイオン電池正極材に着目し、その相境界構造について原子分解能STEMを用いた解析を行ってきた。特に下記の2種類の系において大きな研究の進展が見られたため報告する。 1. LiFePO_4/FePO_4 2相間の格子不整合により、その相境界部分は大きな格子歪みを伴っていると予想された。像ドリフトを低減させた高角度環状暗視野(HAADF)STEM像より格子変形挙動を、STEM-EELSラインスキャンからリチウム濃度勾配を独立に算出し、位置補正後に重ね合わせた。結果、相境界部分は中間的なリチウム組成を示す一方、FePO_4相に匹敵する小さな格子サイズを有していることが明らかとなった。中間組成のLi_FePO_4は本来非常に不安定であり、格子サイズの収縮と相安定化との相関を調査する必要がある。また、格子収縮した状態ではリチウム拡散が阻害される、という計算結果が過去に報告されており、実際のリチウム拡散にも上記のような特異な境界構造が大いに寄与している可能性が高い。 2. LiRh_2O_4/Li_2Rh_2O_4 2相間の格子不整合が無視できるほど小さい本系においては、spinel構造の{111}面上に位置するフラットな異相境界が多数観察された。前述のHAADF-STEMは重元素に敏感であり、リチウム以外の構造変化がほとんどない本系においては解析が困難であるが、軽元素も結像可能な環状明視野(ABF)STEMを用いることで、明暗に分かれた2相が明瞭に観察された。さらにEELS測定との併用により、ABFにおける明領域はLiRh_2O_4、暗領域はLi_2Rh_2O_4であると同定された。これら2相の接続面では非常に近接した不安定なリチウムイオン対が形成されるが、{111}面はこの欠陥面密度が最小であり、結果的に{111}面が相境界として安定的に形成されたものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最適な試料作製方法の探索、及び定量的な格子変形解析・組成分析の組み合わせにより、従来の報告を大きく超える分解能と確度で異相境界の構造解析に成功している。得られている実験情報を基にした理論計算により、より現実に即した条件で、境界部分におけるリチウム拡散挙動を解明できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、観察結果をサポートする理論計算へ取り組む予定である。特に異相境界部近傍のリチウム拡散挙動は実験的にはほとんどアクセス不能な領域であり、理論計算を併用する他にないと考えている。また、その場充放電が可能な電子顕微鏡のホルダーが導入されたため、セットアップ期間後に同系で観察を行い、2相境界の充放電中の動的挙動の観察も行っていく予定である。
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