2013 Fiscal Year Annual Research Report
生物進化と文化進化を統合する枠組みに基づく言語多様性への構成論的アプローチ
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13J07917
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
東垣外 翔 名古屋大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 言語進化 / 脳と言語の共進化 / 進化ダイナミクス |
Research Abstract |
当該年度において, 交付申請書に沿い, 計算機を用いて模擬実験を行い, モデル上のパラメータの詳しい理解と系統発生的な動力学を検討した. 具体的には脳と言語の共進化モデルを2次元平面相互作用系として構築し, 生物と言語が互いにStop&Goを周期的に繰り返しながら共進化する現象を観察することに成功した. またそのサイクルの発生メカニズムについて詳しく分析し, その詳細を明らかにしただけでなく, 言語の系統発生関係について可視化し, 系統樹を作成することに成功し, サイクル中の言語分岐・融合などのありうるシナリオを示した. この成果は, 長い間言語進化において別々に議論されていた文化進化と生物進化を統合して考えることのできる有意義な成果である. また更にモデルの洗練として, 一次元版に洗練した上で詳細な分析を行い, 共進化のプロセスの理解を深めた. これにより, 言語進化における生物・文化共進化概念における問題の一つである生物進化と文化進化の速度差について定量的に議論することが可能になり, それについて, 測定時間間隔への依存問題を定量的に分析した. 言語の文化進化は生物進化より早く, したがって共進化が起こり得ないという反論に対して, 進化速度が測定時間の刻み幅に依存することを鑑みて, 文化進化が生物進化より早いとされる理由は短い刻み幅で進化速度を測定しているからであり, 刻み幅を調整した計測方法を使えば, 言語と生物は互いに共進化可能であるスピードに見えうるということを明らかにした. この成果は共進化概念に対する懸念であった進化速度差の問題に焦点を当て, 共進化概念の妥当性を強く支持する結果となり極めて重要であると言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請年度2年間の1年を終えて, 得られた成果は目的として挙げた部分の約半分である. よって, 残り1年で目標を完遂できると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)共進化概念の妥当性について取りまとめ, 論文として発表を行う (2)言語進化における言語の多様化メカニズムにっいて, 脳―言語共進化の観点から調べ, そのための拡張モデルを構築し計算機によるシミュレーションと実データ比較によって, 言語進化の包括的実態を明らかにする. (3)得られた知見の総まとめを執り行い, 成果を論文として発表する. また知見の工学的応用についても検討する.
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Research Products
(2 results)