2014 Fiscal Year Annual Research Report
流体系への動的スピン流注入と巨視的スピントロニクス現象の開拓
Project/Area Number |
13J08262
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 遼 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピン流 / 角運動量 / 流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では力学運動とスピン流との相互変換現象の基礎物理構築を最終到達目標とし、流体の力学運動を用いた研究を実施している。本年度は流体運動により誘起されるスピン流に関して前年度の成果を基に精査を行った。本年度実施した研究の意義は、力学的スピン流生成の測定結果を実験・理論両面から補強し基礎物理としての妥当性を強固にできた点にある。加えて研究実施計画にあるスピン流による流体駆動に関しても測定に迅速に繋げられる重要な成果を得た。 1.流体スピントロニクスの基礎方程式の精査 運動する系に分布する、渦度では表現できない系自体の剛体的な微小回転内部自由度、これと電子スピンとの相互作用によるBarnett効果を考慮する事で、流体の運動量・全角運動量保存則を破らずより自然な形で基礎方程式を再導出した。その微視機構に関しても渦度による同効果とその揺らぎによって発現する可能性を継続して精査している。 2.流体運動誘起スピン流に関する補強実験 測定システムを熱起電力の影響が検証可能な形で設計し直し、室温で液体金属であるHgおよびInGaSn合金を用いた比較実験、流体駆動時と温度勾配印加時の温度制御実験による信号の比較、および絶縁体流路から金属流路に変更した実験をそれぞれ実施し、複数の観点から本現象を補強する測定結果を得た。 3.スピン流による流体運動制御のための測定系および微細流路構造の開発 上記測定システムを援用し、スピンホール効果によるスピン流を用いて流体を駆動するシステムを開発した。Hgを用いて流路端液面変位の電流符号、強度依存性を測定し、流体の駆動を示す有意な傾向を観測した。並行して、スピンポンピングを利用したスピン流注入による流体運動制御のためのデバイス構築を実施した。良いスピン流注入源である強磁性絶縁体YIGと、マイクロ・ナノ流路加工を施したガラスを熱膨張率の違いを考慮し室温で接合する事で微細流路の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
流体運動を用いた力学的角運動量とスピン流との相関効果の基礎物理構築という最終目標に対し、流体運動により誘起されるスピン流を複数の観点から検証し、実験・理論両面から本現象の妥当性を強固にすることができた。しかし本結果をまとめて論文として発表するまでには至らなかった。一方当初の短期目標であるスピン流による流体運動制御に関しては、実験系の開発に成功し一定の進展を見せた。以上を考慮して、研究は着実に進展しているが当初の計画に対してはやや遅れていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
スピン流-動力間の相互変換現象の基礎物理構築に当たり、両方向から現象にアプローチする本年度方針を引き続き継続していく。本年度様々な観点から検証実験を行い、また理論面でもより体系化が進んだ流体運動によるスピン流生成に関しては、前年度・本年度の結果を早期にまとめ上げる。その後本実験系の自動化・高精度化を行う。これにより本現象のより定量的な議論を可能にし、現状アプローチに困難が伴う複数の流体間の物質依存性、外場応答性などの定量評価を可能にする。スピン流による流体運動制御に関しては、本年度その測定系や微細流路構造の開発など大きな進展を見せた。今後はこちらの方により注力し、スピンホール効果、スピンポンピングおよび拡張ナノ空間における工学技術などを駆使する事で運動制御の早期実現を目指す。同時に微細流路構造を援用し、液体金属のスピン流物性測定、評価を行う。
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