2013 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンオニオン-DLC複合膜の開発と超潤滑システムへの応用
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13J08340
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤井 周 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カーボンナノ粒子 / プラズマイオン注入 / トライボロジー / 水素 |
Research Abstract |
当該年度においてはまずプラズマイオン注入法を用いたカーボンナノ粒子の合成法を確立させ, その成長メカニズムについて考察を行った. 得られたカーボンナノ粒子クラスタについて固体潤滑材としての評価を行い, 摩擦摩耗を低減するメカニズムについて考察を行った. まず, プラズマイオン注入法を用いたカーボンナノ粒子の合成法の開発に着手した. 最初にプラズマイオン注入装置におけるパラメータスタディを行い, 再現性を担保するパラメータの選定を行った. プラズマ励起時のプラズマ密度を極力低くし, 注入時におけるイオンの平均自由行程を上昇させることで, イオンの運動エネルギーを高く保持することができ, 基材である銀薄膜のスパッタによるダメージを抑えた. 結果として高濃度のカーボンナノ粒子クラスタを合成することに成功した. 注入条件や基材である銀薄膜の構造を変化させることにより, プラズマイオン注入法で用いたカーボンイオンの拡散挙動およびカーボンナノ粒子の成長機構について考察を行った. 注入プロセスにおいては銀薄膜のスパッタリングが同時に起こっているが, カーボンナノ粒子の成長および表面への露出に伴いスパッタが減少することが観察された. 得られたカーボンナノ粒子の粒径は20nm前後であり, 一定時間注入を行うと, それ以上は成長しないことも明らかとなった. さらにカーボンナノ粒子はいわゆるカーボンオニオンのような結晶構造を持たず, 非晶質性の高い構造で支配されていることが明らかとなった. 次に得られた高密度カーボンナノ粒子クラスタについて, 固体潤滑材としての評価を行った. 大気中で摩擦試験を行った結果, 0.1前後の低い値を維持し, また摩耗量も無潤滑のシリコン基板と比較して1/10に減少した. せん断によってカーボンナノ粒子は構造緩和され, 水素を多量に含んだグラファイト構造を形成することで, 摩擦摩耗特性を改善していると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カーボンナノ粒子のプラズマイオン注入法を用いた合成法を確立することができたため, トライボロジー特性への評価を行うことが可能となった. またマクロスケールにおけるトライボロジー特性が予想よりも良い傾向を示しており, 応用試験ヘフィードバックすることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
カーボンナノ粒子クラスタが摩擦により水素を大量に含んだグラファイト構造へ変化することから, 水素雰囲気下における応用が可能ではないかと考えている. そのためDLC膜との複合化に先立って, 水素雰囲気下における摩擦特性の評価を行う予定である. また耐久性向上のために, DLC膜状にカーボンナノ粒子を合成させることも視野に入れて研究を行う方針である.
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Research Products
(8 results)