2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J08353
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊崎 薫 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タンパク質膜組み込み / X線結晶構造解析 / YidC |
Research Abstract |
タンパク質膜組み込み機構の構造基盤の解明のため、「YidC」と「Secトランスロコン-リボソーム複合体」の詳細構造をX線結晶構造解析により決定し、構造情報に基づいた機能解析を進めることを目指している。本年度は、細菌の内膜において、タンパク質膜組み込みに重要な役割を果たす膜タンパク質であるYidCのX線結晶構造解析に取り組んだ。これまでにYidCの結晶から、最大分解能3.0ÅのX線回折データセットが得られていた。そこで、YidCの立体構造を決定するために、水銀原子の異常分散を利用した位相決定を試みた。まず水銀の結合のため、Yl50C変異体YidCを作製し、野生型Yidcと同様の手順で精製した。精製タンパク質と塩化メチル水銀を混合し、脂質キュービック相(Lipidic Cubic Phase : LCP)法による結晶化スクリーニングをしたところ、柱状の良質な結晶が得られた。この結晶を用いて大型放射光施設 SPring-8にてX線回折実験を行ったところ、X線回折データが得られ、水銀原子の異常分散を用いた多波長異常分散法により、YidCの立体構造を決定した。 YidCは新規フォールドを持つ5回膜貫通型タンパク質であり、膜貫通ヘリックスの内側に、膜の内部に広がる「親水的な溝」を持っていた。この溝は、保存された多くの親水的なアミノ酸残基によって構成されており、細胞内側と膜側に開いている一方で、細胞外側には閉じていた。このような親水的な溝が疎水的である生体膜の中に存在し、膜内に親水的な環境を作り出していることは、これまでの研究からは全く予測されていない新規の発見であった。本構造に基づいた遺伝学的な解析とクロスリンク実験の結果、基質はYidCの親水的な溝と相互作用し、溝の内側に存在する保存されたアルギニン残基がYidCの機能に重要であることが明らかとなった。これらの知見から、YidCによるタンパク質膜組み込みの分子機構を新たに提唱した。本研究成果を論文としてまとめ、Nature誌に投稿し、既に受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
YidCの結晶構造を決定し、その構造からこれまでの研究からは全く予測されていない新規の発見があったため、当初の計画以上の進展があった。本成果はNature誌に投稿し、既に受理されており、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Secトランスロコン-リボソーム複合体の精製、結晶化を行い、X線結晶構造解析を目指す。 YidCについては、今年度の研究により、新たに基質との結合部位が明らかとなったため、基質とYidCの共結晶化を行い、その基質認識機構や膜組み込みの詳細な分子機構を解明する。
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