2014 Fiscal Year Annual Research Report
ビスジチオレン-ポルフィリノイドπ共役系金属錯体ナノシートの合成と物性制御
Project/Area Number |
13J08382
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 健司 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ナノシート / エレクトロクロミズム / ジチオレン錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機配位子と金属イオンの配位結合からなる配位ナノシートは、配位子と金属イオンの無限の組み合わせによって多彩な物性を自在に引き出せる。さらに溶液中の錯形成反応により穏和な条件でボトムアップ的に合成可能であり、次世代のエレクトロニクス材料としての応用が期待されている。本研究では、エレクトロクロミズムを示すビステルピリジン錯体ナノシートおよびポルフィリノイド共役ジチオラト配位子をもちいたジチオレンナノシートの合成について研究を行った。 まずビステルピリジン錯体シートについては、鉄・コバルトイオンを用いたシートの合成にそれぞれ成功し、各種顕微鏡による観察・分光法により同定を行った。両ナノシートをそれぞれ酸化・還元することで色変化(エレクトロクロミズム)を確認することができた。さらに両ナノシートを用いて簡易的な固体デバイスの作製・駆動にも成功し、両ナノシートを同一デバイスに組み込み同時に色変化させることができ高次のデバイスの作製に成功した。 続いてジチオレンナノシートの研究では、ポルフィラジン-ジチオレン共役型配位子とニッケルイオンからなるナノシートの設計を行い、対応するジチオレン配位子を反応系中で発生させる手法で合成を試みた。反応条件の最適化により副生成物の生成量を減少させるができ、発生した配位子溶液にニッケルイオンを加えることにより電子顕微鏡下での観察で層状構造が見られる固体を得ることに成功した。 これらの知見は、配位ナノシートの合成法の確立・物性評価を通じて配位ナノシートの多様性の実証につながるだけでなく、実用性についてもデバイス化によって達成することができたといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究においては、ビステルピリジン錯体ナノシートのバリエーションを従来の鉄錯体ナノシートの系からコバルトイオンを用いた系に拡張しそのエレクトロクロミック特性を明らかにするとともに昨年度に創成したテルピリジン錯体ナノシートと組み合わせた新しいエレクトロクロミックデバイスの作製に成功した。すなわち、用いる配位子・金属イオンの種類を変更することで異なる色変化の色彩をもつエレクトロクロミック材料を、高速応答性を保ったまま実現できる。 また、ポルフィラジン共役型ジチオレン錯体ナノシートについては配位子の合成時に副生成物が生じたため条件に検討を要したものの、用いる溶媒を変更し・反応温度を下げることによって合成条件の改善が達成され、ニッケルイオンとの反応によりシート状化合物を得るに至った。 以上の研究成果から、当初の計画以上に研究が進展したと判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、ビス(テルピリジン)錯体ナノシートに関して、そのエレクトロクロミズムにおける色調は、配位子・金属イオン種によって大きく影響されることがわかった。これらのエレクトロクロミック特性のディスプレイ等への実用化に近づけるためには、さらなるバリエーションの拡張により多彩化をすすめることで色再現性を向上することが必要不可欠であり、今後さらなる金属イオン種の拡張を行う予定である。さらに金属イオン種の変更により発光特性・磁性といったエレクトロクロミズム以外の物性の発現も目指す予定である。 また、ジチオレンナノシートに関しても副生成物の生成をさらに抑えることが必要であり反応時間・温度に関して最適化を行う予定である。それにより高純度の配位子を得てナノシートの合成を行い、より確実なナノシートの同定および半導体特性やその光応答性などの物性評価を目指す。
|
Research Products
(8 results)