2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J08492
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 亮 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2015-03-31
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Keywords | 天文学 / 赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
星間ダストとは宇宙空間に存在する微小粒子のことである.星間ダストについての研究は銀河の物質・化学進化を調べる上で極めて重要な位置を占めている.本研究ではダストからの放射を直接捉えることができる赤外線分光観測を用いて,炭素質ダストの性質変化を探る.ここで,炭素質ダストの中でも特に polycyclic aromatic hydrocarbon (PAH) と呼ばれる物質に注目して研究をすすめる. PAH は赤外線の領域に複数の強いバンド放射を持つ.このバンド放射の強度比を調べることで PAH の性質および状態を探る.本年度の主な成果は以下の通りである. (1) 赤外線天文衛星「あかり」によって取得した銀河系内の惑星状星雲約 70 天体の 2-5μm 近赤外線スペクトルを解析,新たに開発したデータ処理手法を適用することでこれまでよりも精度の高いデータセットを作成することに成功した.赤外線スペクトルに見られるガスおよび PAH からの放射強度を正確に測定し,分光データカタログとしてまとめた. (2) 作成したカタログを用いて惑星状星雲における PAH の性質とその変化を調べた.惑星状星雲の進化に沿って PAH の電離度,サイズ分布,脂肪族鎖構造の量が変化していることを明らかにした.先行研究では 6μm に存在する PAH 放射プロファイルのピーク位置が星周環境と星間空間で系統的に異なっていることが知られていた.本研究で私は 6μm PAH 放射のピーク位置が惑星状星雲の進化とともに変化しつつあることを明らかにした.また,PAH 放射に見られた上記の進化は単にダストの電離度の変化や輻射による解離反応では説明できないことを指摘した.惑星状星雲におけるダスト進化を解明するための重要な結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤外線天文衛星「あかり」によって取得した近赤外線スペクトルデータの解析が終了しカタログとしてまとめることができた.これによって星間ダストの性質,および変性を調べるために必要なサンプルを集めることができた.また,本カタログのデータを利用することによって惑星状星雲における PAH の変性について新たな知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
赤外線天文衛星「あかり」によって PAH の変性についてあたらしい結果を得ることができた.一方で,「あかり」による観測では惑星状星雲の空間情報を得ることは難しい.今後は高い空間分解能を持った観測装置を用いて結果を検証する.まずはすばる望遠鏡に搭載された中間赤外線撮像分光装置 COMICS によって取得した観測データの解析をすすめる.また,中間赤外線によって得られた結果を電波や可視・近赤外などの他の波長の観測結果と比較し,ダストの変性過程を幅広い波長域で矛盾なく説明することを目指す.
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Research Products
(4 results)