2013 Fiscal Year Annual Research Report
司法過程以外の法実践における規範的な統制可能性の検討
Project/Area Number |
13J08541
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平井 光貴 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 法哲学 / 法概念論 / 正義論 / jurisprudence / conceptual analysis / moral uncertainty |
Research Abstract |
2013年度においては、道徳判断の正しさの基準の内容にかかわらず、法が満たすべき条件・制約原理を探った。具体的成果として、二つの取られうる道筋の発見・検討がなされた。(また、引き続きなす予定である。) 一つ目の道筋は、裁判官等が道徳判断を十分に正しく行えると仮定した場合に、法はいかなる制約原理を満たすべきかを探るものである。これは、「意味変更による規範理論」として一応の結論を見た。「意味変更による規範理論」とは、「裁判官その他の法解釈者が(仮定上)充分に道徳的に正しい判断ができるにも関わらず、現状の法という語の用いられ方、概念との結びつき方を前提とするとそのような判断が「法的に正しくない」ものになってしまうような場合、法的判断に際して法という語の意味を変更することを通じてその判断を法的に正しいものとして捉えなおすことができる」という主張を行うものであり、Dworkinの法概念論の再検討を基礎としている。(なお、こちらの方法論は現行の法制度のもとでも原理的には実現可能と思われるが、必ずしも応用されてはいないというのが現状であると考えられる。) 二つ目の道筋は、「裁判官その他の法解釈者が必ずしも道徳的に正しい判断ができない」と仮定した場合に法が満たすべき条件は何かを検証する道筋である。こちらは、井上達夫やJeremy Waldronなどが提唱する、政治的決定の(内容上の)正当性(rightness)と(所定の条件を満たすことによる)正統性(legitimacy)の区別という正義論・政治哲学上の議論を、何が道徳的に正しいかの判断がつかないような「道徳的不確定性moral uncertainty」の状況下においていかなる判断を下すべきかを検討するAndrew Sepielliらの倫理学上の議論と接続することをめざし、また、法の支配概念を通じてFullerの手続的自然法論の議論との接続も目指す試みであるが、現在理論の大枠と道筋を構築した段階であり、次年度さらに詳細な検計を為す予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主たる目標である、「道徳的正しさがどうであるかにかかわらず法が満たすべき条件」の検討の結果、「意味変更による規範理論」に関する学会発表ならびに投稿論文(補正付掲載可)が成果として結実したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、次年度は客観的な道徳判断の基準や認識の可能性の問題を検討するが、この問題を法理論上の問題と接続するために、上述の法の正統性と道徳的不確定性下での判断に関する問題を合わせて引き続き検討する。
|
Research Products
(1 results)