2014 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロマシン面発光レーザ構造を用いた高出力・広帯域波長可変光源の開拓
Project/Area Number |
13J08625
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中濵 正統 東京工業大学, 精密工学研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 面発光レーザ / 波長可変VCSEL |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は,従来困難であった波長の温度無依存化と波長可変動作の両立の実証実験に成功した.その応用として,多波長アレイの原理実証に成功した.面発光レーザに集積する熱駆動マイクロマシンの寸法制御により,各々の素子の発光波長を所望の値に割り当て(多波長化),かつ熱駆動によって波長の熱ドリフトを打ち消す(アサーマル化)ことで,温度無依存の多波長面発光レーザアレイを実現している. また,MEMS VCSELの光出力は1 mW程度しかなく,4 dBm程度必要とされるアクセス系ネットワークの要求仕様には達していない.WDM通信の光源は,一つの周波数で発振する必要があるが,光出力を増大させるために活性領域を拡大すると,複数の周波数で発振してしまうという課題があった.そこで,複数の共振器を光学的に結合させた複合共振器におけるバーニア効果を利用して,通常の単一周波数VCSELの数十倍の活性層体積でも十分なモード制御を行う構造を提案した.原理実証のためにマイクロマシンを用いない従来のVCSEL構造を試作した.その素子は3×60um2の酸化開口(通常の約20倍)を持つが, 7 mWの光出力でありながら10 dB以上のサイドモード抑圧比(SMSR)を示した.バーニア効果によるモード制御が行われていることを明確に示す発光スペクトルが得られ,理論値との良い一致を確認した. 現時点では通信応用にはSMSRが不十分であるものの,共振器構造の最適化により改善できる.今後はこの構造をアサーマルMEMS VCSELに適用する予定である. これらの成果を学術論文2報(主著),国内会議2報および国際会議2報で報じ,関連学会より3件受賞した.また,フジサンケイビジネスアイ主催の「先端技術大賞」にて文部科学大臣賞(学生部門最優秀賞)を受賞し,新聞・雑誌にて一般に報じられた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
面発光レーザに集積する熱駆動マイクロマシンの寸法制御により,各々の素子の発光波長を所望の値に割り当て(多波長化),かつ熱駆動によって波長の熱ドリフトを打ち消す(アサーマル化)ことで,温度無依存の多波長面発光レーザアレイを実現した.多波長の面発光レーザアレイは波長分割多重(WDM)通信に適しており,実現が強く望まれているが,これまでの報告例は少ない.更に多波長集積と温度無依存化と両立するという試みは,本研究が世界初である. また,面発光レーザの弱い単一モード出力を改善するための新規な手法を提案し,素子の試作によりその有効性を実証した. 以上の成果から,2014年度は期待通りの研究が進展した.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は2014年度の研究成果に基づいて,以下の項目の検討を進める. (1)アサーマルMEMS VCSELの波長安定化手法の開発 アクセス系ネットワークの次世代規格(NG-PON2)では,加入者側の終端装置に安価な波長可変光源が必要になる.温調を用いない波長制御手法としてこれまでに得られた成果であるアサーマル化が有効である.さらに,規格で定められた波長グリッドに収まるように発振波長を制御するために,波長のフィードバック制御を従来よりも安価な方法で行う必要がある.静電力アクチュエータのキャパシタンスの変化量を測定することで,エアギャップ厚さを随時監視し,波長変動のフィードバック制御に利用できないか検討する予定である. (2)光出力の増大のための構造探索 前述の複合共振器構造の最適化により,光出力増大とモード制御の両立を行う.
|
Research Products
(7 results)