2013 Fiscal Year Annual Research Report
カイコO157感染モデルを用いた宿主病原体相互作用の解明と新たな治療戦略の提案
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13J08664
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 惇嗣 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自然免疫 / 適応免疫 / カイコ / ペプチドグリカン / O-157 / 腸管出血性大腸菌 / 抗菌ペプチド / cecropin |
Research Abstract |
「大腸菌の病原性制御機構」に関して、大腸菌の病原性を抑制する機能を有すると考えられる遺伝子を複数同定し、それら遺伝子により細胞壁LPSの分布パターンが制御されていることを明らかにした。また、同定された複数の遺伝子はLPSの輸送に与るトランスポーターとしてファミリーを形成し、細胞質から細胞壁へのLPS輸送機構によって大腸菌の病原性が制御されることが示唆された。大腸菌の病原性とLPSの関連について、以前に腸管出血性大腸菌大腸菌O157においてLPS上のO抗原が病原性を正に制御していることを明らかにした(宮下ら、2012、FEMS Microbiology letters)。本研究によりLPSによる大腸菌の病原性制御機構は広く大腸菌において共通した機構であるという示唆を得ることができた。 また「O157由来LPSを用いたカイコO157感染抵抗性獲得における分子メカニズムの解明」について進展は次の通りである。以前私はカイコにO157の熱処理菌体を予め注射すると、カイコが0157感染に対して抵抗性を示すことを見出した。カイコに対してO157感染抵抗性をもたらすOl57由来の分子はLPSだ私は考えてきたが、実際はLPS画分に混入したペプチドグリカンによって感染抵抗性がもたらされることが明らかになった。 また、カイコにおけるO157感染抵抗性の獲得時には体液中に抗菌活性が強く産生されることをこれまでに見出している。この活性因子を精製することにより、この活性本体はcecropinと呼ばれる抗菌ペプチドであることをこれまでに示している。私はカイコにおけるOl57感染抵抗性獲得を説明するメカニズムとしてこのcecropinに着目し、O157の熱処理菌体を予め注射したカイコでは、cecropin産生器官(脂肪体)におけるcecropin mRNAの量が高いまま維持されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カイコにおける感染抵抗性の獲得については当初3年の研究期間を見込んでいたが、本年度において論文投稿出来る水準まで研究の進展がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
カイコにおける感染抵抗性の獲得に関しては、免疫応答を誘導する菌体分子と、カイコにおいて応答する分子メカニズムについての検討が概ね終了した。平成26年度以降においては、本成果を論文としてまとめあげると共に、研究題目である「宿主病原体相互作用の解明」をさらに遂行するため、カイコとは異なる宿主動物について検討する事を考えている。具体的には、コオロギを実験動物として用いる事を計画している。
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Research Products
(4 results)