2013 Fiscal Year Annual Research Report
中性子回折用超高圧装置の開発と高圧下における水素結合系物質の挙動の解明
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13J08679
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
飯塚 理子 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高圧地球科学 / 中性子回折 / 水素結合 / 高圧装置開発 / J-PRAC |
Research Abstract |
地球内部に遍在する水は、地球内部の諸現象(例えば、鉱物の構造相転移や化学反応)に影響を及ぼしうる。水や水素の存在状態を明らかにすることは、地球内部のダイナミクスや物質循環を理解する上で非常に重要である。本研究では、水素を観察できる中性子線を用いることにより、地球深部に相当する高圧条件下における水素の振舞いと、その地球内部物質に対する影響を探ることを目的として研究を行った。 まず、含水鉱物のアナログ物質として知られる水酸化カルシウムCa(OD)_2について、大強度陽子加速器施設」-PARCのパルス中性子を利用した中性子実験を、高温高圧ビームラインPLANET (BLIl)にて行った。実験は、申請者自身が実験責任者として採択された実験課題に沿って行われた。申請者がこれまでに開発してきた高圧発生装置を持ち込み、この装置の有用性が示された。同時に、Ca(OD)_2の室温高圧相の回折パターンを測定することに初めて成功し、結晶構造と水素原子位置の詳細が明らかになった。また、別の実験から得られたCa(OD)_2の高温高圧相の結果も併せて、相関係と水素結合の変化について考察し、同等の構造をもつ水酸化物の高圧下での振る舞いに関して、体系的な理解につながる知見を得た。この成果報告としては、国内学会での発表に加えて、さらに学術雑誌に論文を投稿し、現在レビュー段階である。 また2013年7月から、ドイツバイロイトにあるBayerisches Geoinstitut (BGI)に長期滞在中である。BGIにはJ-PARCにある大型6軸プレスと同じモデルの装置が備わっており、この装置の習得を兼ねた研究を行った。ここでは、結晶構造中に水素結合をもつ含水鉱物のlawsonite (CaAl_2Si_2O_7(OH)_2・H_2O)をターゲットとして、高温高圧下での変形実験を行った。回収試料の組織と結晶方位分布を調べた結果、勢断変形を受けた試料のみに特徴的な結晶方位選択配向と変形組織が観察され、lawsoniteが沈み込むスラブでの地震波速度異常を誘発する手がかりを得た。成果報告として、12月に米国で行われた国際学会で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は海外に長期滞在をしており、滞在先の研究所で可能な実験や測定の制約から、研究方針に若干の変更があった。しかし一方で、多様な分析装置を用いた回収試料の観察と中性子実験の実現を目指した予備実験ができたことで、一貫した研究成果とフィードバックが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度も引き続きドイツに滞在し、オフラインでの高温高圧実験から水素(水素結合)を持つ化合物の挙動の解明と中性子実験用の高圧セルの開発を進める。予備実験を十分に行い、想定される問題(温度圧力条件の設定や最適な初期試料の合成)に対応する。JPARCでの実験日程にあわせて日本に一時帰国し、研究成果を総合的に発信していく予定である。
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Research Products
(9 results)