2014 Fiscal Year Annual Research Report
中性子回折用超高圧装置の開発と高圧下における水素結合系物質の挙動の解明
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13J08679
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
飯塚 理子 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高圧地球科学 / 中性子回折 / 水素 / 装置開発 / J-PARC / 高温高圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球深部に遍在する水(水素)の存在状態を明らかにすることは、地球内部のダイナミクスや物質循環を理解する上で非常に重要である。本研究では、水素を観察できる中性子線を用いることにより、高温高圧条件下で起こる鉱物の構造相転移や化学反応などの諸現象における水や水素の振る舞いを観察し、地球内部物質に対するこれらの影響を明らかにすることを目的として、研究を遂行した。
1、大型6軸プレスを用いた含水鉱物lawsoniteの変形挙動の観察 2014年12月末まで、ドイツのバイロイト大学 バイエルン地球科学研究所に長期で滞在し、大型6軸プレスを用いた高温高圧実験を行った。ここでは多様な分析装置を用いた回収試料の観察が可能であり、結晶構造中に多量の水を含む含水鉱物lawsonite(CaAl2Si2O7(OH)2・H2O)の高温高圧下での変形実験を行った。回収試料の微細構造を調べた結果、特定の温度と歪み条件下で剪断変形を受けた試料のみに特徴的な結晶方位選択配向と変形組織が観察された。また、透過型電子顕微鏡観察からも、調和的なすべり系を示す転位線が確認でき、lawsoniteが沈み込むスラブでの地震波速度異常を誘発するという仮説を支持する重要な手がかりを得た。 2、高温高圧中性子回折実験に向けたセルの開発 中性子その場観察では、高温高圧が長時間安定に発生でき、かつ、大容量の試料でシグナル強度を稼げることが望ましい。そこで、ブローアウトを防ぐために超硬アンビルの径を一回り大きくし、スチールのジャケットで周りをサポートしたアンビルセルを新たに導入した。さらに、セルのサイズや材質を変えながら圧力発生と加熱試験を繰り返し、最適なアセンブリの検討を行った。鉄-シリケイト-水の混合試料をサンプルとして実際にJ-PARCで中性子実験を行い、新型アンビルセルの性能が大幅に向上したことを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は海外に長期滞在をしており、滞在先の研究所で可能な実験や測定の制約から、研究方針に若干の変更があり、すべてにおいて満足のいく結果が得られた訳ではなかった。しかし一方で、多様な分析装置を用いた回収試料の観察と中性子実験の実現を目指した予備実験がじっくりとできたことで、一貫した研究成果とフィードバックが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、前半でオフラインでの高温高圧実験から含水鉱物の圧縮挙動の解明し、引き続き中性子実験用の高圧セルの開発を進める。現時点で圧力抜けやサンプル周りの物質からの中性子の吸収の軽減についてが、課題として残されている。今秋のJ-PARCでの実験に向けて前半で予備実験を十分に行いこれらの課題を克服し、その他にも想定される問題点(温度圧力条件の設定や最適な初期試料の合成)に対応する。年度の後半は得られた結果のまとめに専念し、研究成果として総合的に発信していく予定である。
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Research Products
(10 results)