2013 Fiscal Year Annual Research Report
光誘導技術を利用した生体内神経細胞間ネットワークの人工構築法の開発
Project/Area Number |
13J08713
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 瑞己 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経細胞 / 軸索伸長 / 光制御 / DCC / Cryptochrome2 / 線虫 |
Research Abstract |
本申請研究では, 光照射による軸索の誘導法の確立を目的とした. 具体的には, 申請者がこれまでに開発した軸索伸長を担う受容体タンパク質DCCを光で活性化するプローブ, Photoactivatable-DCC (PA-DCC)を改良することで, 神経細胞において光刺激により効率的に軸索伸長を誘発する手法を確立する. 1. ニワトリ胎児の後根神経節神経細胞にPA-DCCを導入した. 落射型蛍光顕微鏡下でPA-DCCの導入された神経細胞の軸索先端部にある成長円錐の一部に刺激用の青色光を照射したところ, 青色光照射部位へと軸索が伸長する様子が確認できた. 次に, 複数の神経細胞において青色光照射前後の成長円錐の軌跡を繰り返し記録し, それらの軌跡において軸索の伸長方向の変化を屈曲角として定量化したところ, PA-DCCを導入した神経細胞では導入していないものに比べ有意に青色光照射部位への誘引を示す屈曲角の分布が得られた. 以上の結果より, PA-DCCは初代培養神経細胞において光照射による軸索誘導能を持つことが明らかとなった. 2. PA-DCCによる軸索の光誘導が生きた個体内でも可能であることを実証するため, 生きた線虫においてこれを試行した. 標的神経細胞としてはVD神経細胞を選択した. まず内在性の神経誘引物質であるUNC-6とUNC-6の別の受容体であるUNC-5を欠損させた二重変異体を作製した. 次にPA-DCC分子内のDCCの部分をDCCのホモログであるUNC-40に交換したPA-UNC40を作製し, 先の二重変異体に導入した. 発生段階にあるトランスジェニック線虫を共焦点顕微鏡下で観察しながら標的としたVD神経細胞の成長円錐の一部に継続的に青色光を照射したところ, 成長円錐が青色光照射部位へと誘引される様子が確認できた. 本結果は生きた個体内で成長円錐の挙動の人為的制御を世界で初めて成功させた例であり, 今後の神経形成メカニズムの解明に大いに貢献することが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では生きた個体内で光照射によって特定の神経細胞の軸索伸長を制御することを目的としている. 申請時の計画では初年度は生化学的実験による神経細胞内でのプローブの性能評価を目標としていたが, 「研究の概要」に記載した通り生きた線虫個体内での軸索伸長の制御も実現しており, 当初の計画以上に進呈していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最近の研究で軸索誘導受容体は細胞外軸索誘引物質の勾配による活性化に応じてその局在を変化させることが判明しつつある. 開発したPA-DCCについてもそのような挙動が観察されることが期待されるため, 今後はPA-DCC分子に蛍光色素を結合させたものを神経細胞に発現させ, 全反射証明蛍光顕微鏡を用いた一分子観察によりその挙動を解析する予定である. また線虫個体内での実験において, 今後はより多くの成長円錐について同様の実験を行い重心の軌跡を解析する一方, 二重変異体にmCherryのみを導入した線虫株を作製し対照実験を行い, それらの結果を比較する予定である.
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Research Products
(3 results)