2014 Fiscal Year Annual Research Report
高精度シス配列予測に基づく植物の不良土壌適応戦略の解明
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13J08738
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
時澤 睦朋 岐阜大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 土壌ストレス / プロモーター / シス配列 / アルミニウム / リンゴ酸トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
1.リンゴ酸トランスポーターALMT1の転写制御機構の解析 本研究課題で提案した高精度なシス配列予測をもちいて、シロイヌナズナのアルミニウム誘導性リンゴ酸トランスポーターALMT1 (ALuminum activated Malate Transporter 1)遺伝子のシス配列の同定を行った。昨年度までの報告として8つのシス配列を予測したこと、予測シス配列の置換プロモーター組換え体を用いた機能解析の結果、7つのシス配列が機能を持つことを報告した。本年度は、このALMT1プロモーター上のシス配列に結合する転写因子としてSTOP1(Sensitive TO Proton rhyzotoxicity1 )とCAMTA2(CAlModulin-binding Transcription Activator 2 )を同定することに成功した。また、STOP1の結合領域は従来報告されていたコンセンサスよりも長い塩基を認識していることも同定した。 2.同定したシス配列を用いた合成プロモーターの開発とAlストレス耐性品種の開発 ALMT1遺伝子で解析したシス配列も含め、様々な土壌ストレスのマイクロアレイデータから予測したシス配列をもつ合成プロモーターを共同研究者と100個程度設計した。コンストラクトの作成は終了し、一部組換え体も得ることができている。ただし、単純な1つのシス配列だけでは活性が高いものはあまり得られておらず、複数のシス配列をコンビネーションで持つ組換え体の解析を中心に行っている。 また、ALMT1プロモーターの根端での特異的なAl誘導性を用いて、アルミニウム耐性植物体の作成を行っている。実際には細胞膜の電荷を調整するような複数の遺伝子をALMT1プロモーターにつないだコンストラクトを作成し、植物に組換えを行った。この中のいくつかのラインは若干アルミニウム耐性を獲得した。現在は複数の機能遺伝子を同時にALMT1プロモーターで発現させることで、更なる耐性獲得を試みている。同時に合成プロモーターを用いて機能遺伝子を目的に合わせて発現するような組換え体も計画中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、これまでのリンゴ酸トランスポーターの解析について予定通り本年度中に論文として発表することができた。この解析により、シス配列未知の遺伝子においても実際に高精度にシス配列が予測できることと、トランス因子の探索を行うことにより転写ネットワークを深く理解できることを確認することが出来た。 また、当初の計画ではアルミニウム、カドミニウム、銅、塩類ストレスなど様々なストレスをすべて解析する予定であったが、解析する数が膨大であるため共同研究者と分担し解析を行っている。現在は、特にアルミニウムストレスに関わるシス配列の同定に力を入れ解析を行っている。上記のように、ALMT1プロモーターから当初の予定より数多くのシス配列を同定することができ、ALMT1以外のAl誘導遺伝子についてもプロモーター解析を行っているため、さらに多くのシス配列が同定できると思われる。共同研究者と分担することにより、合成プロモーターのコンストラクト作成や組換え体の作成、その機能解析ともに大きな遅れは無く進行できている。 最後に、プロモーターを用いた育種研究は当初の予定になかったものの、ALMT1のプロモーター機能の理解が進んだことからAl耐性を付与すると予測されるいくつかの遺伝子の組換え体を作出できている。今現在は大きな耐性の獲得は観察できていないが、これら有用遺伝子の相互組換え体を作出することで耐性植物の作出を試みる。これらのことを総合的に評価して、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は作成した合成プロモーター組換え体の機能解析を一つでも多く行うことが目標である。上記したように問題点として1) 単純な一つのシス配列の合成プロモーターでは転写活性能が低いことと、2) STOP1のシス配列の例で示したように予測よりも長い塩基配列を認識している転写因子が存在していることがあげられる。前者はプロモーターに共局在するシス配列をコンビネーションで導入した合成プロモーターを作成すると活性が高くなるものがあることから、コンビネーションの合成プロモーターを解析した後に単独のシス配列の解析を行うことで解決する。後者に対してはより長い配列を持つ合成プロモーターを作成し、遺伝子組換え体を作成している。 さらに、当初の予定にはないが、シロイヌナズナ以外のシス配列予測整備のため、イネ、トマト、ソルガムなどの作物についてもゲノムワイドな転写開始点解析を行い、プロモーター領域の同定を行う予定である。CAGE(Cap Analysis of Gene expression)法による転写開始点タグの調整は本研究代表者が行い、次世代シークエンサーによるシークエンシング解析は外部との共同研究で行う。これら作物において転写開始点を同定することで、作物においても高精度にシス配列予測を行えるようになり、作物育種に直接的に大きく貢献できる。さらに、これらのデータは本研究室が運営する植物プロモーターデータベースppdbに公開する予定である。
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Remarks |
http://www1.gifu-u.ac.jp/~yyy/yyy/shan_ben_yan_jiu_shi.html
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[Journal Article] SENSITIVE TO PROTON RHIZOTOXICITY1, CALMODULIN BINDING TRANSCRIPTION ACTIVATOR2, and other transcription factors are involved in ALUMINUM-ACTIVATED MALATE TRANSPORTER1 expression.2015
Author(s)
Tokizawa M, Kobayashi Y, Saito T, Kobayashi M, Iuchi S, Nomoto M, Tada Y, Yamamoto YY, Koyama H
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Journal Title
Plant Physiology
Volume: 167
Pages: 991-1003
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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