2014 Fiscal Year Annual Research Report
シンセティックジェットによる翼周りの剥離流れ制御に関する数値的研究
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13J08793
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 圭晃 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シンセティックジェット / 剥離制御 / 乱流遷移 / 線形安定性解析 / 流束再構築法 / Large-eddy simulation |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に得た,一様流と翼弦長で無次元化した周波数(以下 F+)は 6 程度で揚抗比最大となり,従来から報告されている F+=1よりも優れた剥離制御特性を示す事に関し,流れの不安定性の観点から解析を行った.シンセティックジェットから導入される擾乱が発達する際に卓越する周波数をLESにより解析した結果と,平均流れに対して平行流近似を施し線形安定性解析を行った結果を比較し,良い一致を得る事を示した.また,投入する擾乱の高調波成分がこれらの不安定性を刺激する事で乱流遷移を早め,投入擾乱そのものが翼面上の大規模渦を生成する事を新たに示した.このような理由から,前年度に得た高い周波数が剥離制御の観点で効果的である事が分かった.なお,検証の為に前年度までに行ったケースよりも投入運動量を100分の1程度に小さくしており,このような微小な擾乱でも同様の剥離制御効果が得られる事を確認している. また,シンセティックジェットにより投入される3次元擾乱と剥離制御効果の関係性を明らかにした.3次元擾乱のうち,特定のモードを有する擾乱は乱流遷移を速め,前縁付近に生成する剥離泡を小さくする事で抵抗を低く抑える事が分かった.一方で,生成される大規模渦構造の強度が弱く,後縁付近での剥離領域が大きくなるために揚力が減り,揚効比の観点では剥離制御性能が最良とならない事を示した.これは前年度に得た,スムーズな乱流遷移と大規模渦構造の生成の双方が重要であるという剥離制御メカニズムの主張を裏付けるものである. また,前年度までに構築した保存量保存性と一様流保持性を保証する高次精度差分法を非構造高次精度スキームの一種である流束再構築法(Flux Reconstruction: FR 法)に新たに拡張し,静止格子上での有効性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目的であったシンセティックジェットによる翼周り剥離流れ制御のメカニズムの理解を,レイノルズ応力の位相平均分解という観点から大規模渦構造と乱流微細渦構造の相互作用を定量的に示す事で達成した. また新たに構築した線形安定性解析のツールを用いて入力擾乱の空間発展メカニズムを整理し,乱流遷移を利用する剥離制御に関して制御効率の高い入力周波数を与える指針を構築する事に成功した. またこれまでに構築した構造格子を用いた高次精度差分法を拡張し,非構造格子で複雑形状周りの高次精度流体計算を可能とした事で,より複雑な実用形状のシンセティックジェット周りのLESを行う基礎技術を確立した.
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では低レイノルズ数・低迎角における翼周り剥離流れの制御メカニズムを整理し終えているが,これらの整理がより広い範囲の剥離流れでの制御に適用可能かどうかを調べる事を今後の計画としている. その為,迎角が大きい大規模な剥離を伴うケースとより高いレイノルズ数での剥離流れを制御するケースに関し新たにLESを行い,既知の制御メカニズムの適用限界を明らかにする. また,実用形状のシンセティックジェットを対象とした剥離制御のLESも行う為,現在構築中の非構造高次精度スキームのコードを大規模計算に対応させる事を計画している.
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Research Products
(7 results)