2014 Fiscal Year Annual Research Report
直接撮像観測による巨大ガス惑星の形成・進化過程の研究
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13J08826
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
葛原 昌幸 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / 巨大惑星 / 惑星の軌道進化 / 惑星形成 / 直接撮像観測 / 視線速度観測 / 赤外線天文学 / 連星 |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大ガス惑星の形成・進化過程の観測的研究を目標とした本研究計画の課題として、1.「直接撮像法を用いた系外巨大ガス惑星の探査と研究」、2.「赤外視線速度法を用いた若い恒星系の内側惑星の探査」がある。それらの課題に対して、本年度に得た具体的成果は以下である。 1.において、本年度も引き続きすばる望遠鏡を用いた直接撮像探査を進めた。昨年度に新たに提案した観測プログラムが本年度に採択されたので、既に予定されていた観測時間に加えて、その追加観測時間も利用して探査を進めた。その結果、残念ながら惑星を発見するには至らなかったが、探査を適切に進めることができた。本年度は、データの較正方法や解析ソフトの更新・改良を試みた。また、観測した恒星の統計的な年齢評価も進めた。さらに、共同研究としてこれまで本探査から得ていたデータも含めた直接撮像観測の結果を統計的に分析し、大軌道巨大惑星や褐色矮星の頻度や分布を制限した(Brandt et al. 2014)。 また、内側に大質量の惑星(もしくは低質量の褐色矮星)を持つことが視線速度観測から知られていた恒星系に対する直接撮像観測のデータを解析した。その結果、その恒星の外側に伴星を検出した。また、その分析から、伴星からの力学的作用がその内側の天体の軌道に影響を与えた可能性があることがわかった。この研究の進捗について天文学会で発表を行った。 2.の課題では、国立天文台で開発中の観測装置が必要になる。昨年度に引き続き、その開発完了後に行う観測研究の準備を進めた。中でも共同研究者の協力のもと、期待される装置性能に基づいた観測計画・方法の検討、観測結果の予測、データ解析方法・ソフトの検討や開発の面で進捗を得た。それらの成果の一部を、国内の研究会で発表した。 本研究の発展的課題として、岡山188cm望遠鏡によるGJ 504惑星系の内側惑星の探査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で説明したように、今年度も本研究計画に対して実際の進展を得た。しかし、一つ目の課題である直接撮像法による惑星探査において、天候などの影響で予定していた観測を全て消化するには至らなかった。また、技術的な項目で改良が望ましい点があり、その対応に時間を要した。その結果、これまでの探査結果についてまとめた論文の執筆を目指していたが、それは果たせていない状況にある。一方、これまで取得したデータの一部を含めた直接撮像探査のデータを統計的に評価した結果を共著者として携わった論文で報告することができた。また、系の内側に惑星を保持している恒星の直接撮像から伴星を検出した成果については、研究計画作成時には想定していなかったが、興味深い結果を得ることができた。さらに、損なった観測時間を補うために提案した観測プログラムが本年度採択され、その観測を実行できている。これらの成果は計画の遅れを取り戻し補うことに貢献するものと評価できる。 二つ目の課題である赤外視線速度法を用いた惑星の探査については、その探査に用いる装置開発の進行状況をふまえながら、実際の探査計画開始に向けた準備を行った。その進捗としては、まだまとまった形になっていないが、前進を得ている状況にある。一方、赤外での視線速度観測ではないが、可視光での視線速度観測を本研究計画で想定している若い恒星に対して行った。これは、本研究計画を補うことに役立ち、さらに若い恒星の視線速度観測のために有益な情報を提供するものであると期待できる。この点は、本課題の進捗に対して資するものである。 この様に、研究の進展において当初の予定より遅れている面はあるが、その課題達成のための着実な進捗があり、想定していた以上の成果を得られている面もある。これらの点は計画の遅れを補うことに貢献していると言える。以上を総合的に評価した結果、上記の自己評価を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はまず、すばる望遠鏡を用いた直接撮像探査を終了する予定である。これまで検出された惑星候補天体の中で確認のための追加観測が終了していない天体が若干残っている。その現在の達成状況を考えると、追加観測は平成27年以内にほぼ終了する予定であり、それによって予定していた探査を完了できる。また、平成26年度に行ったデータ解析ソフトの改良などの技術的な項目については、ほぼ目処がたっているため、早々に完了させたいと考えている。そして、それらの進捗に基づいて、これまで行った直接撮像探査による観測結果をまとめ、論文として報告したいと考えている。 内側大質量惑星をもつ恒星の系の外側に伴星を検出した研究については、その結果の解析、考察、議論が収束に近いところまで進んでいる。従って、それらの点を完了し、その成果を報告するための論文をまとめることに重点を置きたい。 赤外視線速度法による惑星探査の研究においては、実際の観測開始を見据えて必要な準備に取り組んでいきたい。特に、まずは共同研究者と協力して、取得データの解析方法の構築や解析ソフトの作成について進めていきたい。本観測に必要な観測装置の開発は国立天文台の共同研究者が進めているが、その試験観測が今年度内に行われる可能性があり、試験観測で得たデータにそのソフトが適用できることが望まれる。その観測装置の開発が遅れており、現在の状況を考えると、その本格運用の開始には予定よりも時間がかかりそうである。従って、予定していた赤外視線速度法を用いた観測研究を本年度内に開始できない可能性が危惧される。しかし、同手法を用いた惑星の探査は世界的にもユニークな点が多いので、その実行に向けた必要な作業・開発項目に対して適切に対処しておくことは重要であり、その点に力を入れたい。それは今後、本探査計画を実際に本格開始する際の研究の重要なベースになると考えられる。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] A Statistical Analysis of SEEDS and Other High-contrast Exoplanet Surveys: Massive Planets or Low-mass Brown Dwarfs?2014
Author(s)
Brandt, Timothy D.; McElwain, Michael W.; Turner, Edwin L.; Mede, Kyle; Spiegel, David S.; Kuzuhara, Masayuki; Schlieder, Joshua E.; Wisniewski, John P.; Abe, L.; Biller, B.; Brandner, W.; Carson, J.; Currie, T.; Egner, S.; Feldt, M.; Golota, T.; Goto, M.;...;Kudo, Tomoyuki; Kusakabe, Nobuhiko;...; Tamura, Motohide
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 794
Pages: 159
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Recovery of the Candidate Protoplanet HD 100546 b with Gemini/NICI and Detection of Additional (Planet-induced?) Disk Structure at Small Separations2014
Author(s)
Currie, Thayne; Muto, Takayuki; Kudo, Tomoyuki; Honda, Mitsuhiko; Brandt, Timothy D.; Grady, Carol; Fukagawa, Misato; Burrows, Adam; Janson, Markus; Kuzuhara, Masayuki; McElwain, Michael W.; Follette, Katherine; Hashimoto, Jun; Henning, Thomas; Kandori, Ryo; Kusakabe, Nobuhiko; Kwon, Jungmi;...; Tamura, Motohide
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Journal Title
The Astrophysical Journal Letters
Volume: 796
Pages: L30
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Infrared Doppler instrument (IRD) for the Subaru telescope to search for Earth-like planets around nearby M-dwarfs2014
Author(s)
Kotani, Takayuki; Tamura, Motohide; Suto, Hiroshi; Nishikawa, Jun; Sato, Bun'ei; Aoki, Wako; Usuda, Tomonori; Kurokawa, Takashi; Kashiwagi, Ken; Nishiyama, Shogo; Ikeda, Yuji;…; Kudo, Tomoyuki; Kusakabe, Nobuhiko;…; Hori, Yasunori; Omiya, Masashi;…; Harakawa, Hiroki;…; Hirano, Teruyuki; Kuzuhara, Masayuki et al.
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Journal Title
Proceedings of the SPIE 2014
Volume: 9147
Pages: 914714
DOI
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