2013 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性半導体GaMnAsにおけるバンド構造と強磁性
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13J08851
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宗田 伊理也 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピントロニクス / 強磁性半導体 / 共鳴トンネル効果 |
Research Abstract |
強磁性半導体GaMnAsにおいては、強磁性相転移温度が室温より低いことが大きな課題ある。本研究では、強磁性の起源、及び、機構の解明することでこれを解決する手掛かりを得ることを目指している。GaMnAsにおける強磁性発現の起源、及び、機構は未知であり、論争になっている。広く合意のあることは, 正孔が強磁性の発現において重要な役割を担っていることである。筆者らはこれまでの数年に渡る研究によって、価電子帯に正孔は存在せず、不純物帯に存在する正孔が強磁性の発現に強く関与することを明らかにした。従って、GaMnAsにおける不純物帯の物理を明らかにし、さらに、不純物帯と磁性の関係を明らかすることが本研究の課題である。そのために、本年度実施した研究課題は、以下である。GaMnAsにおいてMnを高濃度添加しているにもかかわらず、価電子帯はほとんど影響を受けていないように見えることが明らかになっている。この原因として不純物帯の形成の関与が予想されるため、その機構を解明することである。 本研究において、GaMnAs量子井戸構造における共鳴トンネル分光法を用いて、GaMnAsの価電子帯の規則性のMn濃度依存性を測定した。その結果は、常磁性となるMn濃度においては、Mn濃度増大に伴って価電子帯は不規則になっていったが、Mn濃度をさらに増大させると、強磁性となるMn濃度を超えるとともに価電子帯の規則性が回復した。これらの現象は、p-d混成をともなった強いp-d交換相互作用が引き起こしていると考えられる。これらの結果は、強磁性相転移がバンド構造の再構成を巻き込んで発生することを示唆している。 本研究で、不純物帯の形成が強磁性の発現において重要な役割を果たしていることが明らかにした0このことは、強磁性半導体の強磁性相転移温度の決定因子を明らかにすることに繋がる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、GaMnAsの価電子帯の規則性を共鳴トンネル効果によって測定することであった。実際に、価電子帯の規則性のMn濃度依存性が得られた。申請時の研究計画の通り、進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の計画の通り、GaMnAsにおける不純物帯と磁性の関係を明らかにしていく方針である。それによって、強磁性半導体の強磁性相転移温度の決定機構・因子を知る手掛かりをつかみたい。
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Research Products
(6 results)