2013 Fiscal Year Annual Research Report
患者iPS細胞を用いた低フォスファターゼ症の治療技術開発
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13J08894
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小田 泰昭 熊本大学, 発生医学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | iPS細胞 / 間葉系幹細胞 / 低フォスファターゼ症 |
Research Abstract |
本年度は、申請者が作製した低フォスファターゼ症患者iPS細胞を用いて、①iPS細胞からの間葉系幹細胞(Msc)への分化誘導ならびに正常ALP遺伝子導入、②健常者MSCと患者MSC、患者iPS細胞から分化誘導したMSC (iPS-MSC)の表面抗原解析、③健常者MSCと正常ALP遺伝子導入患者iPS-MSCの分化能比較の3点を中心に行った。重度の症状を呈する低フォスファターゼ症2例の患者由来MSCを用いてiPS細胞の作製を行った。通常、ヒトiPS細胞は高いアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を有するためALP染色陽性となるが、ALPL遺伝子の変異によって発症する低フォスファターゼ症患者から作製したiPS細胞は、患者の症状と一致するように、2例ともALP染色が陰性であった。申請者が作製した低フォスファターゼ症患者iPS細胞は、健常者iPS細胞と同様、多数の未分化マーカーを発現しており、生体外、生体内において、内胚葉、中胚葉、外胚葉の3胚葉への多分化能を持つことが確認された。申請者はヒトiPS細胞からの間葉系幹細胞分化について様々な条件検討を行い、独自の分化誘導法を確立した。この方法を用いて、低フォスファターゼ症患者iPS細胞からiPS・MSCの分化誘導を行った。フローサイトメトリーを用いて間葉系幹細胞の表面抗原解析を行った結果、CD44, CD73, CD90, CD105がいずれも陽性、CD34, CD45, HLA-DRはいずれも陰性であり、健常者のMSCと酷似していた。さらに、iPS細胞を作製した元となる、患者自身のMscと比較しても酷似していることが明らかとなった。患者MSCや患者iPS・MSCは正常ALPL遺伝子を発現していないため、通常の方法では正常な骨分化が生じない。そこで申請者は、内在性のALPL promoterによって正常ALPL遣伝子が発現するレトロウイルスベクターを患者iPS・MSCに導入し、骨分化能の回復が認められるかを検証した。正常ALPL遺伝子を導入していない患者iPS-MSCでは骨分化が生じないが、正常ALPL遺伝子を導入した患者iPS-MSCでは健常者のMSCと同程度の骨分化能を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iPS細胞を用いた生体外での研究成果は当初の計画以上の進捗があった。モデル動物を用いた生体内の研究計画は概ね順調である。総合的には概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で予定以上の進捗が得られたiPS細胞での研究成果については、来年度以降に学術雑誌への論文投稿を行う予定である。来年度以降は、モデル動物を用いた生体内への研究計画により注力する。
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