2014 Fiscal Year Annual Research Report
器官サイズ制御シグナルHippo経路による上皮管腔組織の3次元構築機構の解明
Project/Area Number |
13J08895
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
畠 星治 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 上皮管腔組織 / Hippo経路 / 器官サイズ / 小型魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮管腔組織は、多細胞生物における多くの器官の基盤的構造であり、生体の生理機能の根幹をなすものである。これまでに本特別研究員は、上皮管腔組織形成不全YAP変異メダカの解析により、Hippo-YAP器官サイズ経路が、上皮管腔組織の3次元組織構築を担うことを見出してきたがその分子機構は未解明なままである。昨年度までに、上皮管腔組織形成不全の原因として、組織を構成する個々の細胞において細胞張力を生み出すアクトミオシンの活性が低下していることを見いだしていた。本年度は、YAP変異メダカにおける、細胞張力低下と上皮管腔組織の形成不全との間に横たわる分子機構の解明を試みた。 YAP変異メダカでは眼の形成において、分化したレンズが網膜神経上皮に陥入することなく網膜から外れる。興味深いことに、この過程ではアクトミオシンによる細胞張力の重要性に加えて、ファイブロネクチンなどの細胞外基質の関与も示唆されていた。そこで、ファイブロネクチンの発現パターンを解析した結果、YAP変異メダカでは重合した繊維状ファイブロネクチンが観察されなかった。さらに、野生型メダカにおいてファイブロネクチンの重合を阻害した結果、YAP変異メダカと同様にレンズが網膜から外れる様子が観察された。これらの一連の結果は、Hippo-YAP経路が細胞張力を制御するアクトミオシンの活性制御を介して細胞外基質であるファイブロネクチンの重合化を促進し、レンズおよび網膜神経上皮からなる眼の形成を担っていることを示唆するものである。さらに、YAP変異メダカで観察される心臓形成不全(心臓前駆細胞の移動不全)もファイブロネクチンの重合化不全で説明できることを見いだしており、本研究によりHippo-YAP -アクトミオシン-ファイブロネクチン経路が上皮管腔組織の形成において普遍的な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はHippo-YAP経路が細胞内のアクトミオシンの活性を制御することで細胞外基質のファイブロネクチンの重合化を促進し、眼や心臓といった上皮管腔組織の形成を担っていることを明らかとした。本特別研究員が貢献した本研究成果は原著論文としてNature誌に発表しており(発表論文1)、期待以上の研究の進展があったと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、上皮管腔組織の形成は細胞の張力、形態および移動といった組織を形成する個々の細胞機能が協調的に発揮されることが重要であることが明らかとなってきた。興味深いことに、Hippo経路の構成分子の多くが細胞内小器官の一つである中心体に局在することが知られており、主に中心体から形成される細胞骨格である微小管とHippo経路の活性についての関連が報告されている。このため、中心体に着目して上皮管腔組織形成機構の解析を行う目的で、本年度より中心体研究に卓越した海外の研究室に赴き、共同研究を進めている。来年度は中心体を可視化したメダカおよびゼブラフィッシュを用いて、上皮管腔組織形成における中心体制御を介したHippo経路の機能を解析する予定である。
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Research Products
(4 results)