2013 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフェロイックフォトニック結晶の創成と光機能デバイスへの応用
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13J08942
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
磯谷 亮介 豊橋技術科学大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁性フォトニーック結晶 / マイクロキャビティ / 磁気光学変調器 / 磁気光学膜 / 電気光学膜 / 薄膜 |
Research Abstract |
本年度では、マルチフェロイックフォトニック結晶(EMO構造 : 電気光学(EO)膜と磁気光学(MO)膜の複合キャビティ)の設計および作製・評価を目的とした。 素子の構造設計に関しては、MO膜として常磁性テルビウムガリウムガーネット膜を、EO膜としてチタン酸ジルコン酸ランタン鉛膜を用いたEMO素子の構造を詳細に検討し、各光学薄膜の膜厚等を最適化することで、青色領域で150度を超える偏光面回転角変調が行えることを計算により示した。 これを踏まえ、実験的にEMO構造の原理実証を行った。EO膜であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)膜とテルビウムガリウム酸化物のアモルファスMO膜を積層し、片側にイリジウム膜で形成した金属ミラーを、もう片側に4ペアの二酸化ケイ素と五酸化タンタルの誘電体多層膜を形成した。この構造は、金属ミラーと誘電体多層膜ミラーの間にEO膜・MO膜を挟んだキャビティ構造で、EMO構造の一種であるが、高結晶性のPZT膜がイリジウム等の貴金属膜上で容易に形成できることを利用した構造となっている。作製した素子の偏光面回転角スペクトルを測定したところ、共鳴波長において単層膜の約5倍の回転角0.02度を示した。これは, EMO構造が磁性フォトニック結晶(MPC)として作用し、MO効果を増大させた結果である。また、EO膜に8Vの電圧を印加すると局在波長が約0.2nmシフトした。これらの結果から偏光面回転角の変調量を算出すると、0.003度となりEMO構造を適用することでく変調量は小さいが、世界で初めて常磁性体を利用した電圧駆動型偏光制御素子の原理実証ができた. また、MPCを磁気ホログラム媒体に用いることで大幅に回折効率を向上できることを見出した。光学計算によりMPC媒体の基礎特性を調査した結果、従来の単層膜の約4倍の回折効率が得られることが明らかになった。さらに、磁気ホログラムメモリとしての性能を評価するために、実際にデータを記録・再生したところ、単層膜の2倍以上のコントラスト比を有する鮮明な再生像が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は光を高速かつ多機能に変調できるマルチフェロイックフォトニック結晶(EMO構造)の開発と、それを次世代の記録媒体である磁気ホログラムメモリに応用することを目的としている。本年度は世界に先駆け常磁性体を用いて光の偏光状態を電圧で変調できることを示した。また、磁性フォトニック結晶を磁気ホログラム媒体へ滴用し、磁気ホログラムの分野において、これまでの報告を超える高い回折効率を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度ではEMO構造を用いて光の偏光状態を変調できることを実験的に示した。今後は素子の性能向上を行うことが必要不可欠である。本年度の原理実証素子の性能が低い原因は、キャビティを形成するミラーの片側を金属としたこと、および電気光学膜・磁気光学膜の光吸収が大きいことにある。前者は本研究課題の計画の通り、単結晶基板上に形成した高結晶な電気光学膜の転写プロセスを確立し、高品質な電気光学膜を誘電体多層膜の直上に形成する。後者に関しては、電気光学膜は上述の転写プロセスにて形成することで吸収を低減し、磁気光学膜はレーザー熱処理を導入し結晶粒の微細化を施して吸収の低減を図る。
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Research Products
(11 results)