2013 Fiscal Year Annual Research Report
筋強直性ジストロフィーにおける選択的スプライシングとリン酸化
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13J08957
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
趙 一夢 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | SERCA1 / スプライシング制御 / 筋強直性ジストロフィー / リン酸化 |
Research Abstract |
筋強直性ジストロフィー(DM)では、SERCA1(筋小胞体Ca^<2+>ATPアーゼ1)のスプライシングが異常となり、SERCA1BのmRNAが検出される。先行研究で、スプライシング制御因子であるCELF1とPMA (PKC活性化剤)がSERCA1のスプライシング制御を担うことを示した。両経路の関連性を検証するため、CELF1を発現抑制した細胞にPMAを添加し、スプライシング変化を調べた。結果、CELF1発現抑制により、SERCA1のPMA感受性スプライシング変化が抑制された。これは、PMAによるSERCA1のスプライシング制御がCELF1依存的であることを示唆した。次に、その下流への影響を見るため、SERCA1B特異的C末端アミノ酸残基の抗体を作製した。DMモデルマウスの骨格筋から調整したタンパク質溶液を上記抗体を使用し、ウェスタンブロット解析を行った結果、DMモデルマウスにのみSERCA1Bの発現を認めた。これは、DMにおいてSERCA1は異常発現し、その機能が阻害されている可能性を示唆した。 DM患者においては細胞質内Ca^<2+>濃度が異常に上昇している。一方、SERCA1はCa^<2+>ポンプで、細胞質内Ca^<2+>濃度調節に重要な役割を果たす。従って、SERCA1のスプライシング異常に起因する発現異常が機能的阻害をもたらし、結果、細胞質内Ca^<2+>濃度上昇を引き起こす可能性が考えられた。そこで、SERCA1スプライシングバリアントの機能的差異を調べた。培養細胞にSERCA1A/1Bを其々強制発現させ、共焦点レーザー顕微鏡観察により、小胞体膜上への局在を確認した。次に、小胞体精製を行い、SERCA特異的阻害剤、タプシガルギン感受性活性を調べたところ、ATPアーゼ活性において、Ca^<2+>濃度依存的に活性差異が生じた。SERCA1アイソフォームの機能的差異を示す結果はこれが初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SERCA1のリン酸化が関与する選択的スプライシング制御機構のシグナル伝達経路についてはCELF1の関与を新たに同定した。また、SERCA1A/1B間の機能的差異に関しては、SERCA1の結晶構造解析が専門である東京大学分子細胞生物学研究所の豊島近教授の協力により、複数の新規実驗系(アデノウィルスの大量発現系、Ca^<2+>ポンプのATPアーゼ活性測定系・Ca^<2+>輸送活性測定系)の立ち上げを行った。特に、Ca^<2+>輸送活性測定系に関しては、世界で初めてグラファイト炉を用いた原子吸光分析法を使用しており、放射性同位体を利用する従来の測定法より安全な方法を確立し、結果、20年以上前に報告されたSERCA1のスプライスバリアントに初めて機能的差異を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1) DMモデルマウスにおいて見られた発現異常をヒトDM患者骨格筋サンプルにおいても確かめる。(2) SERCA1A、SERCA1BにおけるCa^<2+>輸送活性の差異を調べる。また、詳細な活性差異を調べるために、(3) Ca^<2+>、ATP、Mg^<2+>濃度依存的活性差異、温度感受性活性差異についても検討する。この他、(4) SERCA1Bの結晶を作製し、SERCA1Aとのわずか8アミノ酸残基の違いによって引き起こされる構造的差異を解析し、機能との関連付けを行う。上記(1)以外に関しては平成26年度前半に結果を得、まとめて投稿する予定である。また、(1)に関しても患者骨格筋サンプルを国立精神・神経センター、西野一三研究部長・林由紀子元室長(東京医科大学・教授)の協力により既に入手済であり、即時解析を行う予定である。
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Research Products
(4 results)