2013 Fiscal Year Annual Research Report
エジプトにおけるイスラームの変容過程:古代エジプトやキリスト教信仰の影響を中心に
Project/Area Number |
13J08962
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 明日香 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | イスラーム / 東方キリスト教 / コプト教会 / 写本研究 / 聖人伝研究 / イスラームとキリスト教 |
Research Abstract |
本研究の目的はイスラームの地域性・時代性を捉えるために、14世紀エジプトにおけるムスリムの宗教実践を、古代エジプトに遡るエジプト人の習俗やキリスト教徒の宗教実践の影響、ムスリム法学者によるこれら習俗の容認といった視点から考察することにある。本年度は、研究課題のうち、「ムスリムの聖者崇敬とコプトの聖人崇敬の比較」に取り組んだ。 主な活動は以下のとおりである : ①イギリス・シンポジウム報告と調査 : 7月末に、イギリス・スティーブネジで開催されたコプト学シンポジウムにて、本研究の予備的報告として、イスラーム期に著されたコプト聖人伝におけるムスリムの描写について報告した。シンポジウム終了後、ロンドンとオックスフォードにて文献調査を行い、日本には所蔵がない、当該研究に関する文献に目を通した。②論文執筆 : 2012年度に報告を行った2件の英語報告を論文として書き直し、投稿した(2014-2015年度刊行予定)。③ベルギーとフランス・報告と調査 : 3月下旬にはベルギー・ルーヴァンカトリック大学の東洋学研究所にて、14世紀アラビア語コプト聖人伝著述の背景について報告した。パリのフランス国立図書館では、本研究に関する手稿本のマイクロフィルムを閲覧した。 得られた成果について : 今年度はコプト聖人伝に記されたムスリムによるキリスト教聖人の崇敬について、そしてムスリム聖者伝に記されたキリスト教徒やユダヤ教徒によるムスリム聖者崇敬について情報を収集し、分析を進めた。その結果、これら聖人伝における、他宗教に属する者による聖人崇敬の描写は、自分たちの聖人の聖性と恩寵を礼讃し、他宗教に対する優位性を強調するという目的をもって著されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は博士論文の執筆もあり、ムスリム側の文献について当初の計画ほど踏み込むことができなかった。しかし同時に、コプト側の崇敬の実態については深く掘り下げることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、14世紀エジプトにおけるムスリムの信仰実践について、同時期のコプトのそれとの比較を念頭に入れつつ、考察していきたい。
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Research Products
(2 results)