2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能ベクトル磁気探査による海底熱水循環系の構造と形成過程に関する研究
Project/Area Number |
13J08982
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 昌和 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 海底熱水循環系 / 深海地磁気異常観測 / 海洋性地殻磁化構造 / 海底地形 / 自立型無人潜水艇 / 有人潜水艇 |
Research Abstract |
本研究課題は、深海底で取得したベクトル磁気観測手法と解析手法を確立し、岩石磁気学的研究と合わせて海底熱水系の磁気的性質を探るものである。海底熱水循環系の空間的な広がりの把握およびその形成過程を解明することが期待される。今年度はまず、3次元的な海底地形変化の影響を十分に考慮して、短波長の構造変化を捉える事の出来る絶対磁化強度推定手法を開発した。この手法をマリアナトラフの5つの熱水活動域において潜水船しんかい6500により取得された深海ベクトル磁力計記録に適用した。これにより解析可能な磁力計記録を大幅に増やし、熱水活動周辺域では磁化強度が5A/m以下と低いこと、磁化強度減少領域が海嶺軸部で直径20-30mと小さく, 海嶺翼部で直径70-100m大きいことを明らかにした。この結果は、安山岩母岩の熱水系が低磁化で特徴付けられることを示す初めての観測例である。また、海嶺翼部の熱水循環系は大規模で比較的長期のマグマ活動により駆動され、海嶺軸部と比べて存在期間が長いことを示唆する。海底地質の分類は潜航映像と写真記録の解析をもとに行った。解析結果の妥当性について採取された岩石試料の磁気物性測定により検証した。さらに、しんかい6500により中央インド洋海嶺の海底熱水系で得られたベクトル磁力計記録を解析した。詳細な海底地形記録のある領域ではマリアナトラフと同様の手法を、それ以外の場所では2次元の解析手法を適用した。これにより熱水活動域では高磁化を示す事を明らかにした。低磁化を示したマリアナトラフ熱水系との違いは、熱水系を支える母岩の違いを反映している可能性がある。さらに、マリアナ前弧の冷湧水域で深海磁気観測を行い、開発した解析手法を観測記録に適用した。これにより開発した手法が深海ベクトル磁力計記録を解析する手法として有効である事を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り解析手法の開発を行い、複数の観測記録に手法を適用した。得られた結果に関する論文を投稿準備中であり、現在共著者の最終確認を待っている。また、マリアナ前弧域での観測も予定通り実施し, 取得した観測記録に手法を適用し、手法の評価と解析を行った。一方、米国ミシガン州立大学で行う予定であった岩石磁気的研究は、受け入れ研究者の航海採択状況により次年度の後半に延期となった。その代わりに、中央インド洋海嶺で得られた観測記録の解析、岩石磁気学的研究に用いる基礎試料の採取を行った。海底地形データの解析について習熟した。解析結果について国内外の学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
沖縄トラフの海底熱水活動域における研究航海に乗船し、海洋研究開発機構の自立型無人潜水機「うらしま」を用いて総合観測を実施する。この観測航海で取得した、海底地形データ、浅部地下構造データを解析する。さらに、昨年度開発した解析手法を用いて深海ベクトル磁力計記録の解析を行う。必要に応じて手法開発を行う。また、採取した試料の岩石磁気学的研究を進める。
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Research Products
(6 results)