2013 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫分子が司るニューロン新生と記憶制御の分子基盤解明
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13J09007
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松田 泰斗 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経幹細胞 / ニューロン新生 / ミクログリア / Toll-like receptor / てんかん |
Research Abstract |
成体海馬では、日々数千におよぶニューロンが恒常的に産生され続けており、学習・記憶、情動認知など脳高次機能に多大な影響を与える。このニューロン新生は、老化や先進的ストレス、虚血など様々な状況によりその程度が変化する。てんかん発作後の海馬では、ニューロンの細胞死とともにニューロン新生が促進され、機能異常なニューロンが多数産生される。その結果、新規物体認識記憶に悪影響が及されることが報告されている。しかし、生体がこのような異常ニューロン新生を感知することで、それを抑制する仕組みを備えているかどうかは不明である。このような概念は、自然免疫応答による外来因子の排除および生体恒常性維持機構と非常に類似している。本研究では、自然免疫受容体TLR9遺伝子欠損マウスを用いて、自然免疫分子が制御する成体ニューロン新生恒常性維持機構を明らかにすることを目的とした。 野生型およびTLR9遺伝子欠損マウスそれぞれに、カイニン酸を投与することで、てんかん発作を誘導し、あえて神経系に傷害を与えたところ、野生型と比較してTLR9遺伝子欠損マウスでは、ニューロン新生がさらに促進されることが明らかになった。この結果は、TLR9シグナルが、てんかん発作後の異常ニューロン新生を抑制している可能性を示唆している。また、TLR9はミクログリアで高発現しており、てんかん発作後にミクログリアの持続的な活性化を引き起こすことを明らかにした。そこで、ミクログリア活性化抑制剤ミノサイクリン投与によりその持続的活性化を阻害したところ、異常ニューロン新生が増加した。これは活性化型ミクログリアが異常ニューロン新生を抑制していることを示している。また、文献検索、RT-PCR、あるいは特異的阻害剤を用いて、TLR9シグナルを介してTNF-αがミクログリアから産生され、異常ニューロン新生を阻害することも突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、てんかんモデルマウスを用いて、神経-免疫相互作用による成体脳ニューロン新生恒常性維持機構の解明に取り組むものである。本年度は、内在性リガンドによる免疫細胞ミクログリア活性化機構を明らかにしただけでなく、ミクログリアから放出されるサイトカインが異常な成体ニューロン新生を抑制しようとすることを明らかにすることができた。このことから、申請書に記載された内容は、ほぼ明らかにできたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、てんかんという限られた局面だけでなく、老化や虚血など、ミクログリアの活性化が認められる他の条件でも、同様に、ニューロン新生恒常性維持機構が存在するのかどうかを明らかにする必要がある。
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Research Products
(1 results)