2013 Fiscal Year Annual Research Report
ゼロ磁化ハーフメタル実現に向けたダブルペロブスカイト単結晶薄膜の作製
Project/Area Number |
13J09038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
重松 圭 東京大学, 大学院理学系研究科, 待別研究員(DC2)
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Keywords | 酸化物 / ダブルペロブスカイト / パルスレーザー堆積法 |
Research Abstract |
今年度は、種々のダブルペロブスカイトについて、パルスレーザー堆積法における薄膜試料の作製条件とBサイトのオーダ率との相関を中心に探索した。研究を進める中で、バルクでは自発的なオーダーを起こすSr_2MgMoO_6をパルスレーザー堆積法によって合成することで、従来考えられていた酸素欠損量の限界を超えられることを発見した。今回、パルスレーザ堆積法で酸索欠損したSr_2MgMoO_6薄膜を作製した。薄膜の作製条件を変化させたところ、低酸素圧領域で濾酸素欠損を含んだ単相の薄膜が得られることがわかった。また、超格子ピークから薄膜のオーダー率を評価したところ、オーダー率は最も低いもので63%であり、バルクで得られる値より顕著にディスオーダーが含まれていることが明らかになった。さらに、X線光電子分光にてMo3d内殻スペクトルの測定を行い、酸素欠損量の変化を観察した。Sr_2MgMoO_6中のMoの光電子分光は周囲の条件による表面酸化・還元の影響を受けやすいことが指摘されていたが、今回はSpring-8の硬X線を用いることでバルク敏感な測定を行い、この問題を回避した。測定の結果、Sr_2MgMoO_6への酸素欠損の導入によって生じたMo^<5+>・Mo^<4+>が電気伝導を担い、これらの量は製膜条件によって制御できることを実験的に示した。電気抵抗率は300Kにおいて2.7-6.6×10^<-2>Ωcmにあり、先行研究より1桁以上低い値が得られた。ホール抵抗の結果は電子伝導性を示し、酸素欠損機構と整合していた。したがって、Bサイトのオーダ 率を低下させるほど、薄膜中の酸素欠損量が増加し電気抵抗率が低下する結果が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パルスレーザー堆積法を用いてダブルペロブスカイトの新しい物性を発見するという目的において、Sr_2MgMoO_6というオーダー率が物性制御のネックになっていた物質の物性改善を行うことができているため、おおむね研究は前進していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でダブルペロブスカイトのBサイトオーダーを、非平衡反応であるパルスレーザー堆積法を用いて制御できる可能性が明らかになった。従本年度で発見したSr_2MgMoO_6について、Alなどを化学ドープした薄膜の作製を行いさらに研究を発展させる。さらに、新たなBサイトの組み合わせによる新物性を探索し、新機能をもった物質を開拓する。
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