2014 Fiscal Year Annual Research Report
新型超高分解能原子核乾板による暗黒物質の到来方向検出実験
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13J09097
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浅田 貴志 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 原子核乾板 / シミュレーション / 飛跡検出器 / 低エネルギー / イオン注入 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年度までの研究により、20~40nmの超微粒子原子核乾板の製造、及びそれらの増感手法、現像手法等についてある程度目処が立ってきており、次に重要となるのが検出器の厳密な性能評価となる。 原子核乾板は、空間分解能としては粒子線検出器として最高位であり、粒子線検出の直接的な校正は困難なので、シミュレーションによる比較が重要である。また暗黒物質シグナル検出において、検出プロセスである臭化銀結晶による感光・現像、現像銀の読み出しといった過程が強く影響することがわかってきており、これらの過程も含むシミュレーションの構築が必要となった。 2014年度の計画は、検出過程を含むシミュレーションモデルの作成、及び妥当性の検証を行い、検出器の結果と比較すること。また、暗黒物質探索において最適な条件を探ることが課題であった。 2014年度の成果として、まず実際に原子核乾板を測定したパラメータより、仮想的な原子核乾板を構築し、固体内のイオン飛跡シミュレーターであるSRIMにより生成された飛跡情報と組み合わせることで、原子核乾板が現像銀飛跡を生成する過程を数値計算する手法を開発した。 また、開発した原子核乾板のシミュレーター、及びイオン注入装置を用いて、検出閾値付近である100 keV以下の炭素シミュレーションと実測を比較し、予測された入射炭素イオン数に対する検出効率と、実際の飛跡の検出効率が誤差範囲で一致することを確認した。また、検出された飛跡の角度に対し、角度分布の1σ幅で定義した角度分解能も誤差範囲で一致することを確認した。これは、暗黒物質の方向検出実験において、検出性能と角度分解能を正しく予測出来るようになったことを意味する。最適条件を決定するためにはまだ測定誤差が残存しているため、誤差原因の追求がのこる課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標である、検出器性能の理解のためのシミュレーション構築、及び実際の検出器との比較校正については概ね達成されている。最適条件決定については、必ずしも初期実験段階において達成が必要ではないため、研究計画における達成度としては順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルの精密化において課題となっている誤差については、原因項目はある程度判明しており、現在研究中である。 また、2014年の研究により、検出器についての理解は一定の成果を得たため、次なる課題は実際の実験環境を想定した実験の計画及び見積もりである。このための計測およびシミュレーションを進めるとともに、実験の準備を行っていく。
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