2013 Fiscal Year Annual Research Report
超老化耐性ハダカデバネズミ特異的に心臓で高発現する抗酸化酵素DeBAT1の解析
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13J09194
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮脇 慎吾 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ハダカデバネズミ / 老化 / 癌化 / heterocephalus glaber / naked mole rat |
Research Abstract |
ハダカデバネズミ(naked mole-rat、DEBA)は、マウスと同等の大きさながら(体重約35g)、年齢が39歳を超える生存個体が確認されている異例の長寿動物である(平均生存期間28年)。申請者は次世代シークエンサーを用いてハダカデバネズミの心臓および肝臓の全mRNAのシークエンシングを行い、ヒト、マウスおよびラットの同組織データと比較することでハダカデバネズミに特異的に高発現する遺伝子群DeBATs (DEBA-associated transcripts)の同定を試みた。結果として、心臓においてハダカデバネズミで特異的に高発現する抗酸化酵素DeBAT1を同定した。これまでに報告のある動物種のなかでDeBAT1が心臓で高発現しているのは、ハダカデバネズミのみであった。DeBAT1は肝臓で発現し、血液中に分泌されることで酵素活性を有することが知られている抗酸化酵素である。そこで申請者は、各動物種の血中におけるDeBAT1の酵素活性について比較解析を行った。ハダカデバネズミ、マウス、ヒトおよびウサギ(報告されている動物のなかで最も酵素活性が高いとされている)の血清を用いてDeBAT1の酵素活性を測定した結果、ハダカデバネズミのDeBAT1の酵素活性は、測定限界値以下であった。DeBAT1はカルシウム依存性の酵素活性を有することが知られているため、ハダカデバネズミの血中カルシウム濃度を測定したところ、驚くべきことに血中カルシウム濃度は検出限界値以下の超低濃度であった。野生下のハダカデバネズミはアフリカ東部の地中に生息し、コレカルシフェロール(ビタミンD)合成系が存在しない独自のカルシウム代謝機構を有するという報告が存在することから(Br J Nutr. 1993)、ハダカデバネズミの血中カルシウム濃度が低いことで、DeBAT1の血中酵素活性が極めて低くなっている可能性が考えられた。今後、マウスやヒトとは異なるカルシウム非依存的なハダカデバネズミ特有のDeBAT1の機能を有する可能性を踏まえて、ハダカデバネズミの生体組織におけるDeBAT1の生理機構について解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は、ハダカデバネズミの老化/がん化抑制機構を規定する候補遺伝子群の一次スクリーニングとして、ハダカデバネズミ・ヒト・マウスおよびラットの組織別発現遺伝子の情報を組み合わせた、ハダカデバネズミ種特異的発現遺伝子群DeBATs (DEBA-associated transcripts)の抽出パイプラインを構築した。今後DeBAT1に次ぐ新たな関与遺伝子候補について解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、現在改善中のハダカデバネズミ遺伝子情報を利用することにより、より高精度の発現解析を行うことが可能となる。今回確立したパイプラインをもちいて、さらなるDeBATを同定し、ハダカデバネズミの癌化および老化耐性を起因するメカニズムの解明に挑みたい。
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Research Products
(2 results)