2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09259
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
会田 大輔 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 南北朝 / 墓誌 / 北周 / 帝王略論 / 史学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究実施計画に基づき、隋唐史学史と北朝政治史研究の二方面で研究を進展させた。隋唐史学史の方面では、隋唐時代の多様な南北朝歴史像を復元するために欠かせない唐初の虞世南撰『帝王略論』の校訂を進め、録文が作成されていない『帝王略論』巻四(南朝部分)の校注稿と解題を完成させた。この成果については、2015年度に公表する予定である。本研究により、『帝王略論』と南朝で作成された史書の関係が明らかとなり、南北朝隋唐時代の史書編纂の一端に迫ることができる。 次に北朝政治史では、西魏・北周の歴史像の再検討を進め、「北周司会考―六官制と覇府の関係をめぐって―」『東洋学報』96‐4(2015年3月)を刊行した。本論文は、北周の六官制のうち、従来は財務長官と認識されてきた司会について検討し、実際には政策伝達を担い、覇府幕僚を兼任・歴任することで北周の権力者を支えていたことを解明したものである。また、2015年3月7日に第四回若手アジア史論壇(於早稲田大学)を主催し、「天と王権―北周宣帝の挑戦―」と題して報告を行った。北周末期の宣帝が天元皇帝を自称し、自らを「上帝」に擬して、「天」との同一化を図った背景について分析した。その結果、宣帝は南北統一が視野に入ってくるなか、非漢族・漢族を越えた中華皇帝としての正当性を獲得・強化するため、新たな権威を創出する必要性に迫られ、儒教の至尊である昊天上帝との同一化を企図し、天元皇帝を自称した可能性のあることがわかった。本研究により、北朝から隋唐への変容過程の一端が解明された。 そのほか、近年の西魏・北周研究をリードしてきた前島佳孝氏の著書『西魏・北周政権史の研究』を書評し、『唐代史研究』17(2014年8月)において公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に基づき、北朝政治史・隋唐史学史の研究を進めることができた。本年度中に査読雑誌である『東洋学報』96‐4(2015年3月)に論文が掲載されたほか、書評の執筆や研究会報告も行い、次年度につながる成果をあげられた。 また、北京で開催された二つの国際学会(中国魏晋南北朝史学会・中国中古史青年学者聯誼会)に参加して報告・コメントを行い、海外の若手研究者と交流することができた。そのほか、調査に赴いた中国の西安と、日本の和泉市久保惣記念美術館において、未報告の石刻史料を発見することができた。 これらの点から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究報告を順次論文化し、雑誌論文として公表していく。また、史料調査の過程で発見した未報告石刻史料について紹介する。さらに『帝王略論』の校訂を完成させ、公表する予定である。また、今後も石刻史料の調査を進めるため、現地調査を行う。
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Research Products
(6 results)