2013 Fiscal Year Annual Research Report
イプシロン型-酸化鉄の磁気特性と電磁波吸収特性に関する研究
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13J09260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉清 まりえ 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化物 / 磁性材料 / 電磁波吸収 / ナノ微粒子 |
Research Abstract |
イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe_2O_3)をベースとして、新しい磁気特性・電磁波吸収特性の観測を目指し、本年度は以下に示す研究を行った。 1. 球状In置換型ε-Fe_2O_3(ε-In_xFe_<2-x>O_3)の合成および電磁波吸収特性の観測 逆ミセル法とゾルゲル法とを組み合わせた手法によりε-In_xFe_<2-x>O_3を合成した。透過型電子顕微鏡像から、得られた試料は球状のナノ粒子であることがわかった。粉末X線回折から、いずれの試料も斜方晶系の結晶構造であることが示され、Inイオンは4種類あるFeサイトのうち特にBサイトを選択的に置換していた。磁気特性を調べたところ、In置換により保磁力は減少していた。また、テラヘルツ時間領域分光法により電磁波吸収特性を測定したところ、吸収周波数はIn置換量の増加に伴い減少した。この吸収周波数の減少は、ε-Fe_2O_3の磁気異方性を担っているとされるBサイトのFeイオンを、非磁性のInイオンで置換したことにより磁気異方性が低下したことに起因していると考えられる。[J. Appl. Phys.,査読有, 115, 172613 (2014)] 2. Rh置換型ε-Fe_2O_3(ε-Rh_xFe_<2-x>O_3)の大量合成および高周波ミリ波吸収の観測 ゾルゲル法を用いてε-Rh_xFe_<2-x>O_3を合成した。ε-Rh_xFe_<2-x>O_3の結晶構造には4種類の非等価なFeサイトがあるが、Rhイオンは選択的にCサイトを置換することがわかった。ε-Rh_xFe_<2-x>O_3のミリ波領域における電磁波吸収特性を、テラヘルツ時間領域分光法を用いて評価した。その結果、Rhイオンの置換量の増加と共に吸収周波数が高周波化し、世界最高記録の222GHzを観測した。[J. Mater. Chem. C, 査読有, 1, 5200-2506 (2013)]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H25年度は、In置換型ε-Fe_2O_3の開発において、これまでに報告がなかった球状形状のナノ粒子を得ることができた。また、その電磁波吸収特性を始めて明らかにした。加えて、Rh置換型ε-Fe_2O_3にも取り組み、工業的量産という観点から重要である大スケールで可能な合成法に成功した他、電磁波吸収周波数として世界最高記録を更新した。このような成果は、ε-Fe_2O_3をベースとした1電磁波吸収材料の開発において非常に有用な知見となるため、当初の計画以上に進展していると評価できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ε-Fe_2O_3をベースとした電磁波吸収材料に関する取り組みとしては、吸収性能を向上させる目的で磁場配向試料の作成を進める予定である。また、記録材料等としての用途を視野に入れた磁気特性の向上という観点からは、例えば、複数種類の金属によるFeイオンの置換により精密に磁気特性を制御し、磁化の向上を目指す。また、ε-Fe_2O_3の特異的な高機能性を理解するためにも、周辺の物質(Fe_2O_3の他の相など)についても理解を広げ、相対的に物性を捕らえられるようにしたいと思う。
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Research Products
(12 results)