2013 Fiscal Year Annual Research Report
金属周期構造を利用した分子共鳴準位への高効率エネルギー移動に関する理論的研究
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13J09308
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
逢坂 良樹 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 局在表面プラズモン / 量子もつれ光子対 / 量子光学 / 電場解析 |
Research Abstract |
これまで、金属アンテナを光のアンテナとして用いたときの、光と分子の相互作用について研究してきた。そして、1次元モデルの解析により、量子干渉効果による高効率な非線形光学応答が起こることを理論的に示した。平成25年度の研究目的としては、これを発展させ、金属周期構造に配置された分子への高効率なエネルギー移動について調べ、分子集団の協力現象の可能性を探求することであった。しかし一方で、以前の研究結果が実験的に実証可能であることを示すという優先度の高い課題が生じた。従って、まずはそちらの課題解決を優先的に進めた。その後、当初の研究目的に向かって、複数並べられた金属アンテナと分子における光学応答について調べた。 研究結果が実験的に実証可能であることを示すため、第一に、様々なパラメータ依存性を調べ、高効率な非線形光学応答の条件を明らかにした。第二に、離散双極子近似を適用した数値シミュレーション法を習得し、具体的な構造を想定して数値シミュレーションを行った。そして、高効率な応答を実現する条件を実験的に満たすことができることを示した。また、1次元モデル解析において詳細な解析を行い、これまでの関連する他研究との整合性を調べ、自身の研究の正当性を示した。以上により、これまでの理論研究による成果が実験的に実証可能であることを示すことができた。以上の成果は、米国物理学会速報誌「Physical Review Letters」に2014年4月1日にオンライン掲載された。 上記で用いた数値シミュレーション法により、チェッカーボード型に並べられた4つの金属アンテナと2つの分子が存在する場合についての光学応答を調べた。その結果、金属アンテナを介して分子間に相関が現れることがわかった。これは、分子集団の協力現象の可能性を示すものである。今後、さらに詳細な解析を行い、周期的に配置された金属アンテナと分子集団による高効率非線形光学応答や協力現象の発現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は、これまでのモデル計算により得られた結果が実験的に実証可能であることを、数値シミュレーションを行うことにより示した。これらは当初の研究目的とは外れているが、非常に重要な結果であり、雑誌論文への掲載にも繋がった。さらに、このとき習得した数値シミュレーションによる電場解析法を用いて、当初の目的である複数並んだ金属と分子の光学応答を調べた。そして、分子集団の協力現象を引き起こす鍵となる分子間の相関が見えた。以上から、本研究は、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、周期的に並んだ金属アンテナにおいて、金属からの発光や、その近傍の分子集団の協力現象について調べていく。しかし、現在用いている離散双極子近似を用いた光学応答のシミュレーションでは、計算機のメモリや計算時間の制限により、金属構造を4~6個の並べた程度の計算が限度である。そこで、この数値シミュレーション法を周期構造に適応できるように発展させる。その方法としては、同様の手法を周期構造に発展させた論文【Phys. Rev. B67,165404 (2003).など】を参考に行う。この電場解析シミュレーション法と量子マスター方程式を用いることにより、励起率や発光強度を計算し議論する。
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Research Products
(9 results)