2013 Fiscal Year Annual Research Report
pH応答スピンクロスオーバー錯体膜の開発と電場によるスピン状態の時空間制御の研究
Project/Area Number |
13J09387
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
亀渕 萌 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | スピンクロスオーバー / プロトン応答性 / ナフィオン / 発光特性 |
Research Abstract |
Nafion中で合成されたプロトン応答性の籠型スピンクロスオーバー鉄(II)錯体におけるスピン状態のpH依存性を支配する要因として、我々が提唱した「配位子末端のアミノ基のプロトン化/脱プロトン化に伴う配位子の構造変化がFe-N配位結合長および配位子場エネルギーの変化を誘起している」とのモデルを実証するため、まずXAFSの測定を行った。XANESからpHを外部刺激とした低スピン―高スピン転移が確認され、EXAFSから見積もったFe-N配位結合長の差は約0.1Åであった。DFT計算による構造最適化を行ったところ、酸性条件で高スピン状態が、塩基性条件では低スピン状態が安定あることが確認され、膜内におけるスピン転移の機構を実験と理論の両面から初めて証明することができた。X線構造解析に堪え得る単結晶は得られていない。動的物性の観点では、pH 4におけるプロトン伝導度は相対湿度40%で2.27×10^<-7>/cmであったのに対し、pH 10では1.96×10^<-9>S/cmであり、pH調整によって伝導度に100倍の差が見られた。電圧印加によるスピン状態制御の実験では、高スピン成分と低スピン成分の分布の時間変化に関して特段の改善が見られず、自在なスピン状態制御には膜内の錯体量やプロトン量の調節に関して今少し検討が必要である。本研究の発展として、プロトン応答性発光ルテニウム(II)二核錯体をNafionへ導入し、pH依存発光透明膜を成功裏に開発した。しかしながら、錯体のサイズが大きく、プロトン伝導度は相対湿度40%においてpH 2,4,12でいずれも10^<-9>~10^<-10>S/cmのオーダーであり、且つpK_a値が大きいことから、電圧による発光制御には至らなかった。現在、pK_a値の小さいイリジウム(III)単核錯体をNafionへ導入し、その物性を調べているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に計画していた実験を一通り行うことができたが、電場による制御に関してまだ検討すべき課題が複数残っているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
相対湿度の調節を行いながらプロトン伝導度測定、電圧印加実験を行う必要があるが、現有の小型環境試験器を適用するためには装置の改良或いは新たな測定系を組む必要があると分かった。これを克服するためには、種々の飽和塩溶液を用いた湿度調節が有効であり、新たに実験系を組んで動的物性を調べてゆく予定である。
|
Research Products
(12 results)
-
[Journal Article] A trickey water molecule coordinated to a verdazyl radical-iron(II)complex : a multitechnique approach2014
Author(s)
Hajime Kamebuchi, Masashi Okubo, Atsushi Okazawa, Masaya Enomoto, Jun Harada, Keiichiro Ogawa, Goro Maruta, Sadamu Takeda, Norimichi Kojima, Cyrille Train, Michel Verdaguer
-
Journal Title
Physical Chemistry Chemical Physics
Volume: (印刷中)
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-