2013 Fiscal Year Annual Research Report
身体性作業記憶に関わるドーパミン作動性ニューロンの機能的役割について
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13J09496
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀬戸川 将 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 転倒 / 作業記憶 / ワーキングメモリー / 障害物回避歩行 / 歩行 / 躓き |
Research Abstract |
歩行中に障害物を跨ぐ際に生じる躓きは, 転倒要因の中でも高い割合を占めている. 歩行時に障害物を跨ぎ越す動作には, 障害物の視覚認知が重要であることが知られているが, 実際の跨ぎ越し中は障害物を目視しながら動作を行うことはほとんどなく, 多くの場合は, 事前に認知・記憶した障害物の位置および高さと幅に関する情報をもとに動作を実行している. 近年, 動物実験において, 障害物回避動作(跨ぎ越し動作)に重要な認知機能の一つとして, 身体情報に関わる作業記憶(身体性作業記憶)の存在が示唆された. 本研究では, この身体性作業記憶に関わる神経機序の解明のため, ドーパミンニューロンに注目し, その機能的役割を明らかにする事を目的とする. 平成25年度は, マウスにおいて身体性作業記憶能力を測定することが可能な新規の実験パラダイムを確立した. 加えて疾病による記憶機能の低下が, 身体性作業記憶に影響を及ぼすか明らかにするため, アルツハイマー病モデルマウスを用いた実験を行った. その結果, アルツハイマー病は身体性作業記憶能力の低下を引き起こす事が示唆された. また, 運動機能障害が本結果に影響を及ぼしている可能性があるため, 運動協調能力, 平面歩行, および障害物回避動作について詳細に検討したが, アルツハイマー病による影響はみられなかった. 本研究に用いたモデルマウスは, アルツハイマー病の症状の進行に伴い大脳皮質内のドーパミンの放出量が低下する事が報告されている. そのため, アルツハイマー病モデルマウスの身体性作業記憶の障害は大脳皮質内のドーパミン含有量の低下が関係している可能性がある. 平成26年度は, ドーパミンの皮質への主な投射先である腹側被蓋野の破壊が, 身体性作業記憶能力にどのような影響を与えるかについて明らかにする. 現在, 60HDA注入後のマウスの身体性作業記憶能力を測定しているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在, 60HDAを用いたドーパミンの起始核の破壊実験を行っている. 薬品の投与量, 破壊方法, および破壊部位を確認するために必要な免疫組織化学的手法の予備実験に, 当初予定していたより多くの期間を割く事になった. しかしながら, 現在は全ての問題を解決し, 行動実験, および解析を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はない. 今後は, ドーパミンニューロンを破壊したマウスを用いて, 身体性作業記憶能力を測定し, ドーパミン作動性ニューロンとの関わりを検討していく. また, 実験の進捗状況に応じて, 皮質へのドーパミン受容体の阻害剤の注入実験も行っていく予定である.
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Research Products
(3 results)