2013 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の環境記憶と行動の可塑性を制御する分子神経基盤の解明
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13J09506
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 博文 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 線虫 / 記憶 / カルシウムイメージング / 走性行動 |
Research Abstract |
本年度は、主に以下の内容の研究を行った。 ・感覚神経ASERの応答の解析 これまでの研究結果から、線虫が飼育された塩濃度に応じて、感覚神経ASERの応答が変化していることが明らかになった。すなわち、線虫の塩濃度記憶の機構を明らかにするにはASER神経の応答をより詳しく調べる必要がある。まず、ASER神経の細胞内カルシウム濃度が経験塩濃度に応じて変化しているか調べるため、FRETタイプのカルシウムインジケーターである Yellow Cameleonを用いてカルシウムイメージングを行った。その結果、ASER神経の細胞内Ca2+濃度は経験塩濃度に応じて変化していることを示す結果が得られた。また、ASER神経は塩濃度の低下に対して興奮する神経とされていたが、線虫の塩走性行動はASER神経のみからの入力で行うことができ、そのため塩濃度の上昇時にも何らかの働きをしていると考えられる。そこで、そこで塩濃度の上昇に対するASERの応答を観察した結果、塩濃度の上昇時にはASERの細胞内Ca2+濃度が低下し、その応答は飼育時の塩濃度に応じて変化することが示唆された。 ・トラッキングイメージング 線虫の神経応答と行動とを直接的に関連付けるため、自由に動いている線虫の動きと神経応答の撮影を同時に行えるシステムを用いる事にした。現時点では、システムの調整及び感覚神経ASERの応答を確認することができた。 ・細胞除去株の作成と解析 経験塩濃度依存的な走性に関与していると考えられる介在神経について、行動への寄与を明らかにするため、カスパーゼを発現させることで細胞を除去した株を作成した。これらを用いて行動解析を行った結果、各介在神経は行動の要素に寄与しているものの、その働きには冗長性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した1年目の計画の内、ほとんどの実験については実施したものの、下流の神経の応答についてはまだ具体的な成果が得られていない。一方で当初2年目に予定していたトラッキングイメージングについては既に行っており、ある程度の成果も得られている。よって多少計画の順番に変更はあるものの、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には申請書に記した計画に基づき研究を進め、1年目に得られた成果と共に線虫の塩濃度記憶を制御する機構を明らかにする予定である。ただし、一部の運動神経などの応答については、従来の手法では観察できないことが考えられる。そのため、先により高度な手法を用いた神経応答の観察を行い、その過程でこれらの神経の応答も観察する予定である。
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Research Products
(3 results)