2014 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀アントニウス会の美術寄進活動研究-創造的行為者としての寄進者
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13J09548
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
茅根 紀子 実践女子大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サヴォワ / 寄進 / 墓標美術 / 風景画 / アントニウス会 / ピエモンテ / 15世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、実践女子大学を拠点に研究を行った他、1月にかけてヨーロッパ調査旅行を行った。本来は7月にも調査旅行を予定していたが、出産育児のためこれを中止し、1月の調査旅行と合わせて行った。その分、予定していた旅費への支出分は、書籍購入にあてた。研究成果の概要は以下のとおりである。 ①本研究計画の方法論的基盤となる、「寄進者と芸術的創造性」の問題について、分析を行った。まず、歴史学において19世紀より体系的に進められてきた、寄進研究の方法論的変遷を追った。本来、法制史的なアプローチから行われてきた寄進研究は、80年代に社会史的アプローチからの考察へと大きな変容を遂げたことで、造形美術もまた取り上げられるようになった。これに対して報告者は、これまでの寄進研究が、造形美術を史料として捉えてきたのであり、寄進の創造的側面について取り上げることが無かったことを指摘し、様式概念を根底とした美術史学によって、寄進を今一度捉えなおすことの必要性を論じた。この成果については、実践女子大学美学美術史学紀要に、雑誌論文の形で発表を行った。 ②サンタントワーヌ修道院聖三位一体礼拝堂に関して、包括的な考察を行った。本礼拝堂はもともと寄進者の邸宅とつながっており、回廊の入り口が後に埋められ、寄進者の墓標が置かれたと解釈した。壁画《港町》の風景は、アントニウス会が崇敬していた聖アントニウスの故郷、エジプトのアントニウス修道院とパウロ修道院を表したものと解釈した。この成果については、2016年刊行予定の記念論文集、『Melanges Christian Heck 』に論文として寄稿した。また、2015年の美術史学会全国大会の口頭発表に採択された。 ③アントニウス会一次史料の編纂事業について、索引を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年4月から7月まで育児休暇を取得したため、写本『聖アントニウス伝』(メディチ版)の考察にとりかかることができなかった。しかし、来年度の4月から7月まで、特別研究員PDとしての身分があるため、最終的に遅れを取り戻すことは可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、実践女子大学を拠点に研究を行う他、8月と2月に、ヨーロッパ調査旅行(ミュンヘン・フィレンツェ)を予定している。 ①昨年度考察を終えた聖三位一体礼拝堂について、2016年5月に岡山で開催される美術史学会全国大会で口頭発表を行う。また、2016年2月にボストンで開催されるMedieval Academy of Americaの大会にて口頭発表を目指す。成果は論文の形にし、雑誌に投稿する。 ②写本『聖アントニウス伝』(メディチ版)の考察を進める。既に制作背景については分析が終わっているため、写本学的・図像学的・文献学的アプローチから研究を行う。8月のヨーロッパ調査では、フィレンツェに滞在し、メディチ家図書館に所蔵される本写本の実地調査を行うほか、フィレンツェ美術史研究所にて二次資料の収集を行う。 ③ランヴェルソ分院の壁画研究に着手する。既に写真調査、資料収集はおおまかに終えているので、資料の読み込みと分析を行う。まずは、多岐にわたる先行研究の概観を把握することから始める。 ④アントニウス会一次史料の編纂事業について、序文を執筆し、Antoniter-Forumからオンライン出版を行うと共に、少部数の印刷を行う。
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Research Products
(2 results)