2013 Fiscal Year Annual Research Report
集積型オクタシアノ金属錯体における高機能光磁性現象の観測
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13J09550
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾崎 仁亮 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 相転移 / 湿度応答 / シアノ架橋錯体 / コバルトイオン |
Research Abstract |
電荷移動やスピンクロスオーバーに基づく温度相転移現象は、固体化学の分野において、興味深い研究課題である。中でも、大きな温度ヒステリシスを示す物質は、基礎化学的な観点のみならず、センサーやディスプレイへの応用展開も期待でき、特に興味深い。そこで、本研究では、多孔性を有するオクタシアノCoW金属錯体を用い、相転移挙動の湿度応答性について調べた。具体的には、Co^IIイオンと[W^v (CN)_8]イオン、および誘起配位子であるピリミジンと4-メチルピリジンを組み合わせたオクタシアノCoW金属錯体Co_3 [W(CN)_8]_2(ピリミジン)_2 (4-メチルピリジン)_2xH_2Oを合成し、その結晶構造および相転移挙動の湿度応答性を調べるとともに、熱力学的な観点から考察を行った。この結果、本錯体は、湿度に応じて結晶格子内の水分子を吸脱し、それに伴って、低湿度においては結晶が異方的に収縮することがわかった。また、さまざまな湿度で処理した粉末サンプルについて、磁化率かける温度(x_MT)の温度依存性(x_MT-Tプロット)を測定することにより、本錯体の相転移挙動は湿度に応じて変化し、低湿度条件下では、高湿度条件下に比べ、総転移温度は上昇し、温度ヒステリシスが縮小することがわかった。示差走査熱量測定および相転移の平均場モデルであるSlichter-Drickamerモデルを用いた解析より、このような湿度応答性は、低湿度条件下では水分子が脱離し、水素結合ネットワークが分断されることにより結晶格子内の内圧が低下することに起因し、結果として系中に働く協同効果が減少することによることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、相転移錯体の相転移挙動の外場による制御を目的に、Co^IIイオンと[W^v(CN)_8]イオンを組み合わせた錯体において、相転移挙動の湿度応答性を観測した。その結果、協同効果の変化に基づく、相転移温度および温度ヒステリシスの変化の観測に成功した。本年度の研究成果は、学術論文が筆頭著者論文1報、共著論文1報、特許出願が1件となっており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、湿度により結晶格子内部で作用する協同効果が変化し、相転移挙動がそれに応答することを観測した。今後は、さまざまな有機配位子を具体的には、Coイオンと[W(CN)_8]イオンを組み合わせた錯体に、さまざまな有機配位子を導入することで、その相転移挙動や磁気特性に及ぼす影響を調べ、より高性能な性能を有する磁性体や相転移錯体の合成を目指す。具体的には、チアゾールやスルホ基などの極性の高い置換基を有する有機配位子を導入することで、新しい機能性の発現をめざす。また、合成したCoW錯体について、DV-Xαやガウシアンを用いた分子軌道計算を行い、理論的観点からも、物質設計に必要な情報を得る予定である。
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Research Products
(11 results)