2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヘミメチル化認識因子NP95による成体海馬ニューロン新生制御メカニズムの解明
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13J09561
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
村尾 直哉 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 成体ニューロン新生 / エピジェネティクス / 神経幹細胞 / DNAメチル化 |
Research Abstract |
本研究課題はNP95が担うエピジェネティクス制御機構に基づいて成体ニューロン新生の分子メカニズムを解明することを目的としている。本年度は、主に以下に示した2つの研究を遂行した。 1、NP95の欠損による成体ニューロン新生への影響の解析 NP95の成体ニューロン新生への関与を調べるため、成体マウス(8週齢)にタモキシフェンを投与し、成体神経幹細胞特異的にNP95の欠損を誘導した後、経時的に8週間後まで各マウスより脳を採取した。これらの脳より脳切片を作製し、免疫組織化学法を用いてNP95欠損細胞を示すGFPの発現と、成体ニューロン新生のそれぞれの段階特異的なマーカータンパク質の発現を比較することにより、NP95欠損による神経幹細胞の動態変化を解析した。具体的には、1~2週後で採取した脳においては増殖能を解析し、3~8週後の脳では分化能を調べると共に、成体神経幹細胞から分化したニューロンの生存率を調べた。その結果、NP95の欠損により成体神経幹細胞の増殖の減少が観察された。加えて、成体ニューロン新生の減少も観察されたが、生存率に変化はなかった。この結果は、NP95が成体神経幹細胞の増殖及び成体ニューロン新生において重要な役割を担うことを明らかとした、本研究において最も重要な結果となった。 2、成体ニューロン新生が関与する海馬依存的な学習・記憶形成におけるNP95の役割の解明 上記した成体神経幹細胞特異的にNP95を欠損させたマウスとそのコントロールマウスに対して恐怖条件付け試験、オープンフィールド試験、明暗往来試験を行い、NP95の欠損が学習・記憶形成や情動認知に与える影響を解析した。その結果、NP95の欠損により学習・記憶形成能力が低下する傾向が見られた。この結果から、NP95の欠損が成体ニューロン新生を減少させるだけでなく、統合失調症などの精神疾患にも関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた1、NP95の欠損による成体ニューロン新生への影響の解析に関してはおおむね達成することが出来た。また、2、成体ニューロン新生が関与する海馬依存的な学習・記憶形成におけるNP95の役割の解明も行った。2、に関しては来年度も引き続き詳細な解析を行っていく予定であるが、今年度目標としていた解析は十分に行えたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今後もおおむね研究計画通りに遂行していく予定である。特に平成26年度は、平成25年度に引き続いて行う「成体ニューロン新生が関与する海馬依存的な学習・記憶形成におけるNP95の役割の解明」に加え、「成体神経幹細胞におけるNP95の標的因子と標的ゲノムDNA領域の同定」を主に行う予定である。平成26年度中に成体神経幹細胞においてNP95によって制御される遺伝子とゲノム領域を明らかにしたいと考えている。今後の研究の遂行により、最終的には成体ニューロン新生の分子基盤を解明することを目標としている。
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Research Products
(3 results)